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大寒|心の春支度に取りかかってみる

 暦の上で最も寒い時季とされる大寒(だいかん)。今年は暖気に押され、北海道では平野部を中心に氷点下を免れた。とはいえ、道東や胆振・日高の太平洋岸などを除いて、大半は雪に覆われたまま。夜には再び冷え込む。路面状況の悪化には注意が必要だ。それでも、どこか気の緩む季節の変わり目である。

 雪深い地域に暮らす人々は、古くから真っ白な大地に残る「雪しるべ」を頼りに歩いてきた。誰かが最初の一歩をしるす。その跡をたどり、さらに踏み固めていく。見知らぬ誰かへの感謝を胸に、自らも次を行く人のために道を付ける。そこには確かな人のぬくもりがあるように思える。

 その大地は今、雪衾(ゆきふすま)とも呼ぶ、天然の掛け布団に包まれている。植物も動物も、雪の下で春を待つ。木枯らしの吹きすさぶころと比べると気温はずいぶんと低いのに、寒さを感じにくいのは、慣れなのか、諦めなのか。きっと雪の暖かさに気付いた証しなのだろう。

 冬の準備を冬支度というなら、春を迎える準備は春支度。単なる準備だけではない、心持ちを新たにする意味合いもあるように感じる。厳寒の中にあってなお、人は春の気配を探そうとする。それは長い冬を過ごす中で自然と身に付いた感覚なのかもしれない。

 今年も、既に半月が過ぎた。年の始まりに抱いた思いや計画は、日々の現実と向き合う中で揺らぎがちだ。そんなとき、雪しるべを思い出してみる。誰かが付けた道すじを信じて進むように、私たちもまた、春という希望に向かって進んで行けたなら素晴らしい。自分の歩みが誰かの"しるべ"になると信じて、心の春支度を始めてみよう。


豊浦 Toyoura 20241207

通りかかった豊浦町大岸の国道37号で撮影。

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はなふさふみ
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