🌻お花見note*夏🌻『まる』
容赦なく照りつける日差しが、夏の訪れを知らせていた。
「暑いね」
「梅雨が明けたね。ね、知ってる?」
彼女は時々こう聞いて、その後に突拍子もないことを続ける。
「ミニヒマワリの真ん中のところ、一つ一つが輪っかになってるんだよ」
「え?」
ほらきた。でも彼女はかまわず続ける。
「その輪っか、大体は○だけど、たまに♡もあるんだって」
もう、”へぇ~”としか言いようがない。
本当に日差しが容赦ない。とりあえず、カフェでも入ろうか、と言ってみた。
🌻
決して余裕があるわけではない僕らは、時々お互いの家でゆっくり過ごす。
むしろその方が、落ち着く気がするんだ。今は”密”はいけないって言うし。彼女も交えて友達と飲んだこともあるけど、飲み会だのカラオケだのはそれほど興味ないから、別に。
でも、こんな状況でオリンピックだけはやるっていうのは、どうも納得いかないけどね。
🌻
彼女の家に行くついでに花屋に立ち寄った。
そういえば、花なんて持って行ったことはなかったし、ふとヒマワリの話を思い出したのだ。あった、あった、ミニヒマワリ。
「はい、これ」
「お花なんて珍しい」
「この前、ヒマワリの話をしてたでしょ?どうなんだろうと思ってさ」
彼女が手早く花瓶に生けるのを眺める。
「ヒマワリは向日性が強いから、真っ直ぐ生けないとダメなんだよねぇ」
「コウジツセイ?」
「そ。日の方に向くから、斜めに生けても起き上がってくるの」
また、”へぇ~”だ。彼女はフラワーアレンジを習っていたっけ。
そして、真ん中は……?
「本当だ、輪っかだ!」
「ね、言ったでしょ?ハートも見たいね」
彼女が真面目な顔で聞く。
「ねぇ……ミニヒマワリとヒメヒマワリ、どうして2本ずつ?
ヒマワリの花言葉、本数によって違うの知ってる?」
「うん。店員さんに聞いた。だからその、敢えてなんでもない数で……」
彼女の眼に浮かんだのは、怒りか、失望か。
「いやその、いつか99本贈りたいと思ってる」
今はそれでいいや、彼女はそう言って、フフと笑った。
🌻おわり🌻
キター、ヒマワリ🌻
というわけで、桜に続いてyuca.さんのお花見企画に参加させて頂きました。
【お誘い】を見たらすぐお話が浮かんできたので、寝る前に忘れないようにメモしたほどでした。
ヒマワリの写真は1枚しかなかったので(○がわかるアップ)買ってきたヒマワリで《手早く彼女が生けた》風にしてみました。
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