詩 『ぽとぽと落ちる違和』
鍵の開く音で一息ついた深夜二時。
この一日がやっと終わったことを知る。
疲れたような安心したようなあなたの表情。
到底わたしには数えきれないほどの
絡み合いながら重なる感情とかさぶた。
苦しみと葛藤をまとう人の日々に触れ
あなたは混乱して傷ついた。
誰かを理解し支えるために
人は想像力や経験値を両腕に抱える。
きっと歩み寄りとはそういう仕組み。
あるいはきっと
忘れてはいけないのは
小さな違和感の収拾。
誰かの心を覗くのはひどく難しい。
誰かの苦悩に気づけなかった時は心が裂けそうになる。
あなたの心が裂けそうになる。
できる何かはあったのかもしれない。
見逃した一瞬はあったのかもしれない。
それでも
あなたの傷に手を当てる。
その傷がかさぶたになっていても。
わたしの手では覆い隠せなくても。
あなたの違和はわたしが拾う。