『アラビアンナイトを楽しむために』は楽しめる
私の積読のなかでもっとも古いものはおそらく、東洋文庫 前嶋 信次 訳『アラビアン・ナイト 1』 である。
『アラビアン・ナイト』の邦題は、言わずと知れた『千夜一夜物語』
『アラジンと魔法のランプ』をはじめ、『アリババと四十人の盗賊』『空飛ぶ絨毯』など、個々の物語が独立して本になっていたり、面白い話だけを抜粋した選集も多く出版されていたりする。
そうした点々とした物語を読んだことはあったけれど、いつかは『アラビアン・ナイト』を読破したいと思っていた。
しかし、千夜に渡って語られた物語は当然のことながら、長い。訳文も平易とは言い難いために、寝る前に読み始めると頭にまったく入ってこない。そのまま、睡魔に負けてしまうことを繰り返す。
これが別巻を含めて十九巻まである。東洋文庫の装丁は大好きだが、その分値が張る。いまだに一巻だけが積まれたまま、現在にいたる。
『アラビアンナイトを楽しむために』はその『アラビアン・ナイト』の雰囲気を紹介してくれる良書だ。
学生の頃に読んだ後、手放してしまったけれど、もう一度読みたいと探してみると、なんと絶版になっていた。
阿刀田 高 氏の他の古典シリーズは、まだ書店でも見かけるのになぜだ、と考えてみても仕方がない。古本はあまり好まないけれども、やむを得ない。古書店やネットも含めて、何年か探し続けていた。
最近、比較的きれいな新古書を手に入れた。久々にじっくり紙の本を読む。贅沢な時間。
『アラビアン・ナイト』は長いだけでなく、もともと中東で伝わっていた民話が時間をかけて集成された枠物語であるので、「それでどうなったの?」と思うような物語も多い。
『アラビアンナイトを楽しむために』ではそのなかでも、有名なものではなく著者の琴線に触れたいくつかの物語を、わかりやすい言葉で読み解いてくれる。
ときには小説家らしい著者の解釈が添えられていて、それも楽しい。
そして、やっぱり『アラビアン・ナイト』を読まねば、と決意だけはする。
著者の『~を楽しむために』は他の古典のものも面白いので、もっと読まれてほしい。そして『アラビアンナイトを楽しむために』も復刊してほしいな、と願う。