[読書感想文]獣の奏者
獣の奏者
上橋菜穂子 作
ずっと読んでみたかったファンタジー。
はじめの部分だけ漫画で読んだことがあったので
どんなもんかなと思いましたが
想像より壮大でした。
一人の聡明な動物好きな女の子の人生の物語かと思っていましたが
思いの外
国のあり方や人のあり方、それぞれの思惑が蠢く中で
悩みながらも自分の信念を曲げたり曲げなかったりするお話でした。
王獣を操れるようになるエリンと
王獣を操れるという事実が国の政治的問題に関わってくるため
どんどん国の中枢に巻き込まれていく展開がハラハラします。
王獣や生き物のあり方を知りたいだけのエリンが
失われた王獣の育て方の意図を暴いていってしまい、
毎回「これはまずい」と気がつくのですが、
しっかり説明されるまでなんで「まずい」のか理解できず。(笑)
大人になっても全然わからんものはわからんなと思いました。
ただ、長い年月かけて、伝えられてきたことが
意図がわからなくなってしまった途端
形だけ残って、いびつになっていくのが面白かったです。
このお話はファンタジーですが
会社でも、学校でも、政治でも
家庭内でもありそう。
また、話の中でどんどん国の形(?)トップが変わっていくのですが
今ある国の形が変化するのって
漠然と不安だろうなと。
一般市民の気持ちになって読んでしまいました。
上の立場になってものが考えられないのは
平社員の性です。
闘蛇編、王獣編、探求編、完結編と
エリンが大人になるにつれて
守るものが増えていき、
国とのしがらみと自分の信念との中で
どう選択していくのか・・・・
最後まで展開が読めず、ドキドキしました。
全部読んでからの
外伝を読むと
更に外伝のスピンオフが愛おしくなります。
最初から最後まで
一気に読んでほしい本だと思いました。