どうやらまだ死にたくないらしい
① 51歳、心臓やられて死にかけた
2023年冬、現在52歳、既婚、兵庫県北部出身、京都在住、夫とふたり暮らしで子どもはいない、職業は小説家。
なんとなくのほほんと暮らして、年を取っていくはずだった。
ところが、昨年2022年5月半ば、51歳の私は繫華街で息苦しくなり、緊急搬送され入院した。
「心不全」と告げられ、ICUに入れられ、全身管だらけになりしばらく過ごした。
40代からの不調を、すべて更年期、加齢のせいにして放置した結果だった。
様々な病名を告げられ立派な病人となり、退院後は生活を変えざるをえなくなった。
入院の顛末は、幻冬舎plusに「51歳緊急入院の乱」として連載をして、「シニカケ日記」という本になり、11月22日に発売された。
あれから一年ちょいが経過し、私の生活は激変した。
病院に運ばれて、意識が遠のいて「死ぬかも」と思った瞬間があった。
あとで主治医に聞くと、心臓の一部がほとんど動いていなかったらしく、本当に死にかけていたのだ。
2週間ほど入院し、なんとか回復して退院した。
食生活を変えるのと運動により、入院中に7キロ減ったのに加え、一年で10キロ落とし、すべての数値は改善され、投薬治療をしながら普通に暮らしてはいる。
幻冬舎plusで「51歳緊急入院の乱」を連載している際に、数人から「花房さんのコラムを読んで、自分も心当たりがあり病院に行きました」という連絡をもらった。
全員、女性で、40代が多かった。
確かに、私の不調も40代からはじまっていた。気がつけば、周りを見ても、40代で心身の不調を訴える女性は、とても多い。
若い頃に仕事に夢中になり、30代半ばか後半で出産し、子育ての真っ最中で、けれど仕事も続けている女性たちは、自分のことが後回しになり、どんどん不調を抱える傾向があるようにも思える。
身体だけではなく、心もだ。
心を病む人は、女性でも男性でも、世の中に溢れている。
病んでいる人だらけだ。
病んでいるのに気づいていない人も、たくさんいる。
私自身も、そうメンタルが強くもない。40代初めに、全く眠れなくなり常に意識が朦朧として、道路を渡っていても信号が赤なのか青なのか判断できなくなったたこともあり、事故に遭いかけた。ふらふらとして転げ落ちそうで、階段を降りるのが怖かった。あまりにも鬱々としていて「これから生きていてもつらいだけだから、死んだほうが楽になれる」「このままだと、自死するか不注意の事故で死んでしまう」と考えるようになって、精神科に駆け込んだ。
それからは眠る薬を手放せずになり、今でも月に一度は精神科医のお世話になっている。
そうやって心の不調は改善されたのだが、今回は身体の不調のほうを放置していた結果、さまざまな病気が発見され薬を飲み、病院通いの機会がさらに増えた。
ただ、定期的に心身の医者にかかるようになったのは、よかったと思っている。
私のような人は、たくさんいるはずだ。
退院してから、周りの人の病気の話もよく耳にするようになったし、私自身の病気の話の流れで、「実は……」と、自身や家族の不調を告白してくれる人も増えた。
そしてかつての私のように、不調を放置している人も、多い。自分の心身を自ら痛めつけるような生き方をしている人も、少なくない。
けれど、「病院に行ったほうがいい」と第三者が言っても、家族が頼んでも、「大丈夫だ」と、根拠のない自信を盾に、不調を悪化させる人のほうが、多いんじゃないか。
私はもともと病院嫌いに加え、忙しさを言い訳にした結果、心臓が止まりかけるところまでいってしまった。
自分が50代で入院して、この一年ひしひしと感じたけれど、50代で亡くなることは、珍しくもなんともない。
癌や心臓、脳の病気、そして心を病んでの自死。
死は、目の前にある。
そしてそのたびに、「まだ死にたくない」と考えるようになった。
若い頃は、あんなにも死にたかったし、昨年入院した際に、「もう、いいか」なんて、思っていたし、30歳を超えた自分が想像もつかなかったのに。
人生の中で、今が一番、生きることに執着している。
そのために、この一年は、生活を変えて、だいぶ健康になり、再発することなく生きのびてきた。
入院中のあれこれは「シニカケ日記」に記したけれど、その後のことをどこかに書き残しておきたくて、noteをはじめることにした。
ここでは、具体的にこの一年の健康への取り組み、食という楽しみと減量、何より病気のことなどを書いていく。
興味がある人だけ、おつきあいください。