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140文字の読書レビュー/世界は私を必要としなくても、私はあなたを必要とする



あらすじ
「超圧縮 地球生物全史/ヘンリー・ジー」は、38億年にわたる生命の歴史を超圧縮して描いたサイエンス書である。過酷な地球の環境における進化と絶滅を繰り返す生命の旅を、最新の科学的知見に基づき魅力的に語り、地球上の生命の誕生からホモ・サピエンスの拡散、そして未来や終末に至るまで、壮大な物語を描き出します。



「超圧縮 地球生物全史」を読んだ後、心に虚無感が深く残った。地球上の生命が誕生し、命が絶え、最終的にすべてが無に帰る──その過程を描き出すこの本は、生命の存在を問い直させる。

約8億年後、地球上の生命はすべて絶滅すると書かれてあった。そう、なにもかもすべてだ。絶望的な気持ちが湧き上がり、無機質な宇宙のなかにある生命の意味を考えた。
なぜ、生命は生まれたのか? 10億年をかけて命を繋いできたすべての生命は、何のためだったのか?

「地球の資源を食い尽くし、ただ滅びるだけ」。どれだけ考えても、終わらないこの問いに答えは見つからない。

地球の歴史を振り返れば、壮大な宇宙の流れに生きる私たち、人間の存在はあまりに儚い。芸術も、文学も、建築も、愛も夢も、すべて消え去る。ただ残るのは冷たい無。その想像に、言葉では表せないほどの虚無感が、また広がった。

そしていつの日か太陽に飲み込まれ、何もかもが熱となる。その事実に打ちひしがれ、言葉もなくなった。


絶望してはいけない。地球は存在し、生命はまだ生きている

超圧縮 地球生物全史/ヘンリー・ジー

そんななか、ただひとつ分かることがあるとすれば、それは「世界は私を必要としない」ということだ。私たちがどれだけ泣き叫び、意味を与えようとしても、宇宙は私たちを待ってなどいない。

「だからこそ人は繋がり合うのだ」と思った。人は生きる意味を求め、言葉を交わし、手を取り合う。そして他者を愛する。

世界が私たちを必要としてくれなくても、私たちは互いに必要とする。いまこの瞬間において私が他者にとって意味を持つなら、れは、宇宙のどんな真理よりも、確かだと思えた。

虚無感はまだ消えそうにない。そう、8億年後には何も残らないのだろう。でも、いま、ここで生きている。隣にいる誰かのために生きることは、きっと無駄ではないと信じている。

「地球生命史がわかると、世界の見え方が変わる」

超圧縮 地球生物全史/ヘンリー・ジー



ヘンリー・ジー【著】
『ネイチャー』シニアエディター。元カリフォルニア大学指導教授。1962年ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学にて博士号取得。専門は古生物学および進化生物学。1987年より科学雑誌『ネイチャー』の編集に参加し、現在は生物学シニアエディター。ただし、仕事のスタイルは監督というより参加者の立場に近く、羽毛恐竜や最初期の魚類など多数の古生物学的発見に貢献している。テレビやラジオなどに専門家として登場、BBC World Science Serviceという番組も製作。

竹内薫 【訳】
(たけうち・かおる)。1960年東京生まれ。理学博士、サイエンス作家。東京大学教養学部、理学部卒業、カナダ・マギル大学大学院博士課程修了。小説、エッセイ、翻訳など幅広い分野で活躍している。主な訳書に『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』(ロジャー・ペンローズ著、新潮社)、『奇跡の脳』(ジル・ボルト・テイラー著、新潮文庫)、『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ポール・ナース著、ダイヤモンド社)などがある。

超圧縮 地球生物全史/ヘンリー・ジー


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吉澤ハナ(まよなか )
新刊『意味なんかないけどぼくらは光る』を3月5日に上梓します。書き下ろしを追加したエッセイとなっておりますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。

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