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混沌の街ベルリン

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記事一覧

なぜ人々は全裸になりたがるのか

なぜ人々は全裸になりたがるのか

どこの街にも、それぞれとっても素敵な魅力と、それと均衡する諸々な不平不満のようなものがあると思います。

道が汚いとか、駅が小便くさいとか、冬が暗いとか、住宅難で家探しにうんざりするとか、トイレがいちいち有料だとか、これらは私がベルリンに住んでいた時に思っていたことなのですが。

もちろん、離れてみて、やっぱりあれはよかったなぁと思うこともあります。例えば、夏に蚊が出ないことや(これはかなり過ごし

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マッパで解放され脳がほぐれた極楽浄土の平泳ぎ

マッパで解放され脳がほぐれた極楽浄土の平泳ぎ

男女混浴スパに行って脳内革命が起きたという話。

ある冬の終わり頃、私は体がバキバキに痛く、頭が爆発しそうな行き詰まりを感じて、理由はわからないけど発狂しそうでした。

ベルリンでは風呂桶有りのアパートに住むのは至難の技で、私は風呂桶に身を浸すことに恋焦がれていました。

私が住んでいたアパートの浴室は長細く、洗面・トイレ・シャワーが縦に並び、人間1人が使用できるギリギリの幅に設計されていたもので

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他の人のことを気にしない街で重箱の隅をつつく話

他の人のことを気にしない街で重箱の隅をつつく話

近所でよく見る、ホームレスと思われるおばさんがいました。いつも、私には見えない誰かと、大きな声で白熱した議論を交わしながら道を歩いていた。

おばさんがワイヤレス・イヤフォンで誰かと通話していた可能性も拭えません。私はおばさんの耳の穴を確認はしていませんから。

だけどおそらく、私たちには見えない誰かと熱く会話をしていたのだと思います。エア討論です。

当時、私はベルリンに住んでいて、外によく出か

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ワイルドでディープな自転車泥棒

ワイルドでディープな自転車泥棒

ベルリンに住んでいた5年間に、私は自転車を買おうと思ったことが一度もありませんでした。街は平地で道幅も比較的広いので、かなり自転車に乗っている人は多かったのですが、個人的には自転車を購入して所有する気になりませんでした。

その理由は3つ、1つ目は交通機関がわりと充実しているからなんとかなる、2つ目はそれまでスーツケースで引っ越しをしてきたので所有物を増やしたくなかった、3つ目はシンプルに自転車は

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チップどろんこ相撲

チップどろんこ相撲

日本には飲食店でチップ文化がないので、アメリカみたいに最低15とか20%はチップをあげないといけないというプレッシャーにおののく必要がないですから、利用者としては気がラクだと思っています。

逆に、チップ文化の人たちからしたら、日本でとっても素敵なサービスをしてくれたウエイターさんに、チップをあげたくなっちゃう衝動は一体どう処理したらいいの、この満足感この感謝はどう表現したらいいの、となるのではと

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バベルの塔的アイスカフェラテの乱

バベルの塔的アイスカフェラテの乱

バベルの塔の神話をご存知でしょうか。そんなの常識だと言われればそれまでなのですが、犬サイズの脳しか持たない私は、割と大人になって知りました。

旧約聖書に出てくるバベルの塔は、天にまで届くような塔を建ていた人間を見て、神が怒り、それまで一つだった人間の言語をバラバラにして、人間が互いに意志疎通できないようにした、と言われます。

神話ですが、もしそれが本当なら、学生および語学で苦労している人たちが

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不運なロシアンルーレットとスモモ

不運なロシアンルーレットとスモモ

2019年の夏、母と私は高速バスの中でトラブルに見舞われていました。チェコのプラハ行きのバスに、ベルリンから乗り込んだばかりの時です。まだバスは出発していません。

田んぼに囲まれた静かな町に住む母が、当時私が住んでいたベルリンにはるばる遊びに来てくれました。

英語も喋れない、150cmもない小柄な、齢70近い女性が、人生初の一人海外旅行に果敢に挑戦して、2回の飛行機の乗り継ぎをクリアし、せっか

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少数派が多数派になる濃縮エリアの棒アイス

少数派が多数派になる濃縮エリアの棒アイス

ベルリンに住んでいたときに、ワインとピアノ演奏のペアリングという、何を血迷ったかひどくおしゃれなイベントに行ったことがあります。

私は友人があまりいないし、1人でお酒を飲むのは好きなので、そこにワインがあってピアノも聴けるなら良いじゃないか、と思って出向いたのです。その頃、私は1人気軽に飲みに行ける居心地の良い場所を見つけられず、何か新たな機会に挑戦せねばと奮い立っていたのかもしれません。

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武器を持ちたくない若者が詰まったマトリョーシカ

武器を持ちたくない若者が詰まったマトリョーシカ

私がボランティアで手伝いをしているカフェで、ある朝、テラス席の掃除をしていると、所定の席でタバコ片手に座っている船長が私を呼び、カタルーニャ語で「このお客さんに何が飲みたいか聞いてごらん」と言いました。

と言われても、私はさっぱり何を言われているのかわからなかったので、「何だって?もう一回言って」と聞き返すと、船長はスペイン語で言い直しました。やっと理解できた私は、船長の目の前に腰掛けている白髪

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ドアに刺さったままの鍵とファック・ユー

ドアに刺さったままの鍵とファック・ユー

この10年間で10回以上引っ越しをしてきました。だいたい都市部や中心地に近い街のアパートに住み、近所付き合いというものは、あまりありませんでした。中には、出会うたびに立ち話をして、窓越しに手を振ったりするような隣のおじさんもいましたが、大体のところでは、すれ違えば挨拶はしても、それ以上何も言葉も交わさないし、隣人の素性は知らない、というのがほとんどでした。

これまでに最も長く住んだアパートはベル

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