野良のハナ

無計画に日本を出て十数年、欧州4カ国で生息、スペインの島に漂着。集団や組織になじめずノ…

野良のハナ

無計画に日本を出て十数年、欧州4カ国で生息、スペインの島に漂着。集団や組織になじめずノラ犬のように生き、犬のケツばかり追っている人。強烈な認知の歪みの泥水の中ほふく前進中。要点を端的に話すことが壊滅的で、路上で全所持品を広げて裸で勝手に蚤の市状態の会話力で、人様を困らせています。

マガジン

  • お金を払って喜んで犬のうんこ拾い

    スペイン南部、国内最大級の犬の保護施設で、犬のうんこを拾いまくった体験談。スペインではある特定の犬種が毎年何万頭も人間から見捨てられる。

  • 日本人だから知ってるでしょ?

    日本の外に住んでいて聞かれたこと、「日本人なら知ってるでしょう」と振られて冷や汗をかいた日本関連の話題についてまとめています。

  • 混沌の街ベルリン

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お金を払って喜んで犬のうんこを拾いにきた話

私は今スペイン南部の陽の照りつける茶色く乾いた土地の真ん中にいます。いつも暮らしている島とは違い、歩いても海にたどりつけない平地の中です。 自分は今起こったばかりのことを書くのは向いていない人間で、しばらく寝かせる時間を要します。とれたての野菜を新鮮なうちに出す店ではなく、古漬け専門店です。ですが、今、あまりにたくさんの刺激の中に身を置き、古漬けにするより浅漬けくらいで出していった方が良い気がするので、書いてみます。 スペイン南部、もう首都マドリッドに行くよりも南下してモ

    • ああ疲れてるんだな。疲労感という天罰

      ある日、歯磨きをしようと歯ブラシを手に取って口の近くに近づけたら、ブラシに乗っているペーストが洗顔クリームであることに気づいた。間一髪だった。 ああ、疲れてるんだな、と思った。 洗顔フォームのチューブを歯磨き粉のチューブだと思って手に取ったのだ。人間は見ているようで全く見ていないのだなとつくづく思った。きっと私はきゅうりとズッキーニの違いも気づかないし、ピスタチオと銀杏の違いも気がつかない。 以前も似たようなことがあった。 長距離フライトの飛行機の中で、トイレに行き歯

      • 浅はかな推測、デフォルト岩顔と涙、ベルギー人

        初めて会ったベルギー人とイタリア人と一つ屋根の下で1週間寝泊まりしていました。 私は自慢ではないけど人付き合いが上手くない。社交の場は苦手だし、友達も多くない。それは日本でもそうだったし、日本の外でもそうで。 とはいえ、1週間誰かと一緒に作業しないといけないとなると、さすがの私でも、なんとか会話をしたり意思疎通しようと少しは試みる。 私はベルギー人がどんな人たちか全く知らないくらい、ベルギー人と喋ったことはなかったし、もちろんベルギーに行ったこともなかった。そして、この

        • あなたのコーヒーがあの人たちのコーヒーの概念と同じとは限らない

          日本でよく見るコーヒーチェーン店のような形態をスペインで見ることがあまりありません。大きな駅や空港、観光地の中心地にはスターバックスを見ても、それ以外の場所で私はお目にかかったことはありません。 従って、これを言ったら、どこかから反感を買いそうですけど、小声で私の主観を言うと、スペインでスターバックスの立ち位置は、どこでも判で押したようにあるチェーン店、バーガーキングやマクドナルドなどと大差ないような、店内が汚くて特に美味しいわけでもないうえにやたら高い店(ひどい言いようで

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        • 日本人だから知ってるでしょ?
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        記事

          物々交換とか、ライフ・ワーク・バランスとか、性善説とか

          近所に全ては店主のさじ加減というカフェがあります。 カフェの主であるおじさん、ここでは船長と呼ぶのですが、10時開店となっていても10時5分に鍵を開けていたり、土日は午後からしか開かなかったり、フレキシブル。船長をとがめる人は誰もいませんから、自由です。 私は船長の店で時々手伝いをしています。ボランティアというていで、お金はもらわず、コーヒーをタダで飲ませてもらったり、時々ランチをごちそうになったり、私の体と時間(労働力)と飲食の物々交換です。 一見あまり働かないのかと

          物々交換とか、ライフ・ワーク・バランスとか、性善説とか

          思うようにいかないことが起こらないのは旅ではない

          旅に出ると大なり小なりトラブルはつきものだと思う。飛行機がちょっと遅延するくらいの小さなトラブルもあれば(小さくないか)、財布を盗まれてしまうという大きなトラブルもあるでしょう。 行ったことがないところへ行き、やったことがないことをやるんだから仕方がない。帰ったら「あー疲れた、やっと帰ってきた」とか言いながら、私たちはまたどこかへ出かけて行き、家にいたら出会えない人と喋り、楽しいことを味わう。そして、思うようにいかないことも味わう。 それが旅であり、思うようにいかないこと

          思うようにいかないことが起こらないのは旅ではない

          日本人だから知ってるでしょ? クジラとイヌの扱い

          日本人だとわかると、話している相手から日本について聞きたかったことを私にぶつけられることがあります。 日本語での会話でさえ即答ができず、軽快な会話のキャッチボールを崩すことが得意な私にとって、外国語で「日本について」即答を求められると接続の悪いインターネットのように一瞬停止してしまいます。 あるベルギー人のおじいさんと話をしていたら、「君は日本人なのか。一つ質問していいかい。ここだけの話だから正直に答えていい。日本での犬の扱いってどうなんだい?」と質問されました。 日本

          日本人だから知ってるでしょ? クジラとイヌの扱い

          色々リセットしたかったらインド以外にもあるよ

          ただいま、塀の中で暮らしています。 と言っても、罪を犯したわけではなく、犬の保護施設に泊まり込みで1週間滞在しています。 車がないと移動できない、周りには工場も畑も何もない、原っぱだけが広がる中にポツンとある施設です。 道には誰も歩いておらず、道路脇にはプラスチックゴミが散乱しているような、心温まらない風景の地方です(悪口を言うつもりはないのですが本当に原っぱとゴミだけなので)。 インターネットやメディア、レストランやショップという娯楽から離れていると、「現実」とはな

          色々リセットしたかったらインド以外にもあるよ

          謝らない魔法の言葉

          日本で生まれ育ち、枕詞で「すみません」「申し訳ありません」と言っておけば、大体のことが丸くおさまると信じて、生きてきた人間でした。私の場合はですが。 とりあえず謝っておくことが習慣化していたので、謝らない文化との対面は、内陸で育った人が初めて大海を目の当たりにしたような、レモンを食べたことがない犬が初めてレモンを口に入れて慌てて吐き出すような衝撃でした。 南欧の島国マルタで働いていた時、仕事の発注先でミスがあり、私の職場では「ちょっと、どうするんだよ」みたいな感じで、原因

          謝らない魔法の言葉

          なぜ人々は全裸になりたがるのか

          どこの街にも、それぞれとっても素敵な魅力と、それと均衡する諸々な不平不満のようなものがあると思います。 道が汚いとか、駅が小便くさいとか、冬が暗いとか、住宅難で家探しにうんざりするとか、トイレがいちいち有料だとか、これらは私がベルリンに住んでいた時に思っていたことなのですが。 もちろん、離れてみて、やっぱりあれはよかったなぁと思うこともあります。例えば、夏に蚊が出ないことや(これはかなり過ごしやすかった)、全裸混浴のスパ(とてもおもしろかった)、それらが私にとっては懐かし

          なぜ人々は全裸になりたがるのか

          マッパで解放され脳がほぐれた極楽浄土の平泳ぎ

          男女混浴スパに行って脳内革命が起きたという話。 ある冬の終わり頃、私は体がバキバキに痛く、頭が爆発しそうな行き詰まりを感じて、理由はわからないけど発狂しそうでした。 ベルリンでは風呂桶有りのアパートに住むのは至難の技で、私は風呂桶に身を浸すことに恋焦がれていました。 私が住んでいたアパートの浴室は長細く、洗面・トイレ・シャワーが縦に並び、人間1人が使用できるギリギリの幅に設計されていたもので。クイズで答えるのにモタついていたら壁がどんどん迫ってきたみたいな圧迫感でした。

          マッパで解放され脳がほぐれた極楽浄土の平泳ぎ

          日本人だから知ってるでしょ?あんたのクレエンシアは何だ

          私が日本人だとわかると、ちょっとした雑談をしている相手から、いろいろな日本関連質問が飛んできます。 パッと相手が納得するような返答ができない私は、流れの悪い排水溝のようにモゴモゴしてしまいます。そして早く何か言わなきゃと焦ると、おや?暖房入ってます?というくらいの大汗をかきます。 日本語だってろくに会話で即答できないんだから、外国語となるとそれはもっと絶望的。卓球のオリンピック中国代表選手と一般人が打ち合いをするようなもので、素人は固まって腕を振ることさえできません。

          日本人だから知ってるでしょ?あんたのクレエンシアは何だ

          優しい青年、スポイルされた女の子、頭のかたい軍隊

          ジェムという優しいトルコ人の青年と軽食を食べに行ったことがある。正確には彼は飲み物だけだったから、私だけが薄い皮のトルティーヤで巻かれたラップサンドを食べていた。 皿にナイフとフォークと一緒に出てきたラップサンドをうまく切れない私を見て「手で掴んで食べたらいいよ」とジェムは笑顔で言っていた。 どういう経緯で彼と話すことになったのか覚えてないのだけれど、その時私が毎日通っていた語学学校でたしかクラスメイトだった。 私は日本で仕事を辞めて、作り笑顔をすることも愛想を振りまく

          優しい青年、スポイルされた女の子、頭のかたい軍隊

          他の人のことを気にしない街で重箱の隅をつつく話

          近所でよく見る、ホームレスと思われるおばさんがいました。いつも、私には見えない誰かと、大きな声で白熱した議論を交わしながら道を歩いていた。 おばさんがワイヤレス・イヤフォンで誰かと通話していた可能性も拭えません。私はおばさんの耳の穴を確認はしていませんから。 だけどおそらく、私たちには見えない誰かと熱く会話をしていたのだと思います。エア討論です。 当時、私はベルリンに住んでいて、外によく出かけるほうではなかったけど、たまに出かけると、何かの運命なのか、必ずおばさんの姿を

          他の人のことを気にしない街で重箱の隅をつつく話

          エアコンの亡骸と静かに豆腐になった夏

          ある夏に私は怒り狂っていた。 怒りというエネルギーで湯が沸かせたら、それをためてお風呂に浸かりたいくらいでした。たぶん、湯船いっぱいにお湯をためても余って、お茶も淹れて、素麺もゆがけるくらい、怒りを自家発電していました。 私の憤慨の矛先は、暑さ、そしてのらりくらりと対応をしてくれない不動産屋でした。 私たち(相方と私)はある春にベルリンからスペインの島に越してきました。居住を決めた賃貸アパートは家具家電付きで、エアコンが各部屋についていました。欧州では暖房はあっても冷房

          エアコンの亡骸と静かに豆腐になった夏

          裸の王様と犬

          犬を剥製にすると言う人に会ったことがありますか? 私はあります。 仮にその人のことを「裸の王様」と呼んでみます。王様は上半身は裸ですが、自分が半裸だと言うことに気づいているのか気づいていないのか、よくわかりません。 王様は城の外では、割と人々に親切だったりするので、評判は悪くはありませんでしたが、城の中ではというと、それは微妙なところです。 城の中の人が「ずっと王様の半裸を見続けるのは、いかんせんしんどいので、少し何かお召しになってくれませんかね」と言うと、「ああ?わ

          裸の王様と犬