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【散文+短歌】きらきら、きらい

瀬生ゆう子さん・山田香ふみさん・桜庭紀子さんの歌集『Supplement vol.0』を拝見し、ガッツリ影響を受けて短歌熱に火がついた花屋です。

知らない駅に降り立ち、ふと足を止めたお花屋さんで素敵な花束を見つけて心を惹かれた少女のように。
湧き出た言葉たち(3月の散文日記+短歌)をこっそり書き留めたいと思います。

3月×日(月)
焼き立てのトーストの匂いと、窓を叩く雨の音で目覚めた月曜日。
白米過激派の母には珍しく今朝は洋食だ。
お気に入りのサンダルフォーのいちごジャムを塗っていると、
「よつ葉バターも買っといたでよ」と、バターナイフをそっと差し出された。
雨の日は憂鬱だけれど、すみっこに小さくバターを塗る音はなんだか心地良い。

いちごジャム、バターの音がさりさりと 

雨音かさなり さりさりぽつり


3月×日(火)

仕事帰り。田園都市線でスマホを見ると充電が切れていた。
こんな日に限って、研究室にモバイルバッテリーを忘れてきたみたいでついてない。
手持ち無沙汰になったので、ふと窓の外を見ると、多摩川の土手沿いは桜の新芽がちらほら出て桃色に染まっていた。
きっと、下を向いてばかりの日々だとこのピンク色には気付かなかっただろう。結果的に良い日になった。

電池切れスマホ片手に見た街が こんなに桃色生きてたなんて


3月×日(水)
好きな人が、夢に出てきた。
青色の手綱を引いて、白い馬に乗っていたので、「いつのまに乗馬を覚えたの?」と訊いた。
すると、「子どものころからだけど?」と笑って、私を置いて走り去って行った。
デリカシーがない人だなと思ったけれど、aikoの歌みたいに白馬の鬣が揺れていたし、無駄に姿勢が良くてずるいなって思った。

憧れと知らないあなたが混ざり合う 

ゆめときめきが きらきらきらい


3月×日(木)
心の整理がついたので、元カレに貰ったペアリングをようやく手放すことに決めた。
五年間、クローゼットに眠らせていた指輪を持ってルミネの中の質屋に行くと、付いた値段は500円だった。
「ピンクゴールドは価値が低いんです。今度はプラチナがいいですよ」
なるほど、プラチナがいいらしい。
帰り道に駅前のマックに寄って、その500円を使っててりたまを食べた。遅すぎた春が、やっと来た。

冬の日に君が選んだペアリング 

生まれ変わって、てりたまひとつ


3月×日(金)

ノー残業DAYだったので近くの温泉施設へ。
平日かつ、生憎の雨模様のおかげなのか露天風呂もサウナも貸し切りでこいつは運が良い。好きなだけ整ったあとにジェット風呂なるものを見つけたので入ってみた。
スイッチを入れると、肩、腕、腰、尻に向けて勢いよくお湯が噴射される。ふうん。めっちゃ痛いじゃん。痛みを紛らわせようと身体をゆっくりと湯の底に沈めると少し和らいだ。
隣で沈む70歳くらいのマダムは、涼しい顔で噴射を全身に浴びている。
まだまだ修行が足りないらしい。

泡風呂のジェットパワーが特級で 隣のマダムが僧侶に見える


3月×日(土)
お昼過ぎまで執筆をしていたので、14時頃やっと空腹に気付く。
昨日お給料も入ったことだしと自分を甘やかしながら向かったのは、お気に入りのスシロー。
お一人様なのでスムーズにカウンターに座ると、先のぺろぺろ事件の名残を受けているのかレーンにはお塩とわさびなどの調味料しか流れてこない。
回転寿司とはこれ如何に。
回っているお寿司を、いつの日かまたお腹いっぱい食べられますように。

なんとなく流されたかったわけじゃない
通り過ぎてくわさびとお塩


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