花屋 澄

さくらももこを敬愛する怠惰なOL🍨 三時のおやつとミット練習が好き🌸

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【小説】対岸の二人

第6回阿波しらさぎ文学賞 一次通過作品 対岸の二人 八年間、働いた銀行を辞めてきた。ずっと悩まされてきた歯痛に耐えかねて、知らない街の歯医者に駆け込んだときみたいに。 「しばらく家でゆっくりすることにしたけん」 連絡も寄こさずに神奈川から実家に戻ってきた娘に対して、母は鳩が豆鉄砲でも喰らったように 「ほれはかんまんけんど、……あんた仕事はどないしたん」 と、顔全体にフェイスパックを貼り付けた白塗りのお化けみたいな恰好で尋ねた。網戸越しに庭へと視線を向けると白柴の太郎が

    • 縁起が悪い朝の話

      今日は、朝からなにかと縁起が悪い日だった。 ガチャンとコップが割れるような音で目が覚め、慌てて電気を付けると床で家人が悶えながら倒れている。 低血圧のせいで立ち眩みをして、フローリングに頭をぶつけたらしい。 慌てて駆け寄ってソファーに寝かせたが、しばらく様子を見ても吐いたり痛みを訴えてはこなかったのでホッとする。 なんだか生きた心地がしないまま、代官山へ新人研修を受けに行く家人を送り出した。 そんなときに頭を過ったのが北日本文学賞の一次選考の結果で。 時刻は朝5時、嫌な後味

      • 双子が、ママになった日

        大切な親友が、ママになった。 いや、彼女のことは今まで便宜上、親友という呼称を用いてきたが本当は親友ではない。 なので今日だけは、私たちにしっくりくる使い慣れた言い方で書きたいと思う。 大切な双子が、ママになった。 双子と言っても本当に血縁関係があるわけではなく、特別な関係性という意味での双子なのである。 コバルト文庫より出版されている「マリア様がみてる」という少女小説が私の青春時代からのバイブルになるのだが、深い仲の女友達はこの書籍をきっかけに出逢ったマリみて好きの淑女た

        • ウエディング・ベルにはまだ早い

          こんなタイトルを書くと、なんだか短編小説のようだが今日はわたしのすきな人について遠慮なしに熱く喋りまくるエッセイである。 さて。かれこれ彼女とは10年以上の付き合いで、途中離れてしまうことがあったが去年から再びまた交流をし始めて、季節の折には手紙を書くようになった。 けれど、悲しいことにわたしに対して彼女から手紙の返事が来たことは一度もない。 それもそのはずで、わたしと彼女は友人関係などではなく、舞台女優とファンクラブ会員という関係性だからなのである。   霧矢大夢(きり

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        【小説】対岸の二人

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        • 【エッセイ】はなのかんづめ
          7本

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          前世は、たぶん、犬。

          妙な悪癖かもしれないが、「近しい人の匂いを嗅ぐのが好き」という習性がある。 かつて、一緒に暮らしていた恋人の靴下を嗅ぐことが習慣になっており、 ランドリーボックスの中に入っている靴下を深夜にこっそり嗅ぐ時間が好きだった。 間の悪いことに、一度だけ恋人にその姿を見られたことがある。 彼からすると、彼女が夜中に脱衣所でしゃがみ込んで自分の靴下をスゥーハァーしているのだ。 悲鳴を上げられてもおかしくはない状況だろうが、懐の広い人だったので とんでもない速度で靴下を取り上げられ、ド

          前世は、たぶん、犬。

          パピコは二人で分けたいけれど(文フリ所感)

          チョコモナカジャンボを二人で分けようって言われたら、断固拒否する花屋です。 雪見だいふくも「ひとくち頂戴」って言われたら、気前よく1つ丸ごとプレゼントするけれど、ピノを食べてるときに「一個分けて~な」って言う奴には「えっ、非道なの?6人家族の中の、子供をひとり奪っているって自覚ある?」と普通の人ならドン引きの強火で対抗します。 なぜ、ここまでアイスについて執拗に語るのかと言うと、埃さん&瀬生ゆう子さんの「適量パピコ」という短歌集が非常に美しかったから。 ……というわけで、何

          パピコは二人で分けたいけれど(文フリ所感)

          ピンクの雪だるまと、カメレオン

          さくらラテ、カービィー、パンサー、レディ、林家ペー・パー。 上に挙げた単語の羅列で、連想する1つの色はなんでしょう? そう、〈ピンク〉である。 おそらく、素直な方の場合はちょうどいま散り際になっている桜の花びらの色を連想してくれたことだろう。 突然だが、私はピンクが嫌いだ。 その起源は、6歳の頃、母親が冬のセールで買ってきてくれたダッフルコートに遡る。うちの母親はピンクや赤色、レースに花柄などのいわゆる女性らしい色やモチーフが好きで、好んでそのようなデザインの洋服を私に着

          ピンクの雪だるまと、カメレオン

          【散文+短歌】きらきら、きらい

          瀬生ゆう子さん・山田香ふみさん・桜庭紀子さんの歌集『Supplement vol.0』を拝見し、ガッツリ影響を受けて短歌熱に火がついた花屋です。 知らない駅に降り立ち、ふと足を止めたお花屋さんで素敵な花束を見つけて心を惹かれた少女のように。 湧き出た言葉たち(3月の散文日記+短歌)をこっそり書き留めたいと思います。 3月×日(月) 焼き立てのトーストの匂いと、窓を叩く雨の音で目覚めた月曜日。 白米過激派の母には珍しく今朝は洋食だ。 お気に入りのサンダルフォーのいちごジャム

          【散文+短歌】きらきら、きらい

          嫉妬の色は、みどり色

          昔読んだ漫画にそう描いていたので、私はクリームソーダやメロンソーダを飲むたびに「ああ、自分はいま〈嫉妬〉を飲み干しているんだな」と思うことがある。 というわけで、先日知人と電話をしたときに嫉妬の話になったので、思考整理のために嫉妬について話したい。 私は、秋生まれの天秤座なのだが、誕生日占いの本には必ずと言っていいほど「嫉妬深い」けれど「束縛を嫌う」と書かれている。 つまりは、自分は束縛されたくないけれど他人に対しては「行動を律しろ」と要求する、理不尽極まりない性格であるら

          嫉妬の色は、みどり色

          長年続けている趣味や、特技はなんですか?

          たまに、初対面の人やマッチングアプリで出逢った人に表題の質問を訊かれる。 この質問、私にスポーツや勉学の才があれば「トリリンガルです」 「流体力学を少々」 「ダイビングのライセンスを持っています」「合気道で黒帯なんですよ」 など見栄えの良い特技を話すことができるのだが、生憎そういった才がないので、実はとても返答に困るのである。 それと言うのも、私が特技だと思っているものは一人ですることが難しく、環境が整っていないとお見せすることもできないものだからだ。 (また、仮にその場で披

          長年続けている趣味や、特技はなんですか?

          蟒蛇の母さんと、バウムクーヘン

          わたしの母は、5年前に大病を患うまでは、信じられないほどの酒飲みだった。 いや、酒飲みなんて可愛らしい言葉で済ませられるほどのものではない。 蟒に蛇と書いて、蟒蛇(うわばみ) わたしにとって、母は蟒蛇だったのである。 毎日ロング缶(500ml)ビール2本を飲み干して、そこからは肴も無しに焼酎の水割り(2Lのタイプの焼酎パックを2-3日で開けてしまう)を睡魔が来るまで飲み続ける。 小学生のはなちゃんが、中学生のアタシが、高校生の私が、何度も静止しても、母を潤すお酒の循環を止め

          蟒蛇の母さんと、バウムクーヘン

          レスキュー隊に早朝から叩き起こされた話

          2023年6月14日 AM7:13 ガンガンガンと玄関を叩く音と、ピンポンを連打される音で起こされた。 なにごとかと思い備え付けのTVモニターでドアの向こう側の様子を見てみると、担架や色んなものを持った「消防局」のロングコートを着た人が5~6人私の部屋を取り囲むようにしてマイムマイムの形で並んでいる。 こんな閑静な住宅街で殺人事件か、テロか、ただならぬ出来事でも起きたのかとビビッてカーディガンを着てドアを開けた。 「朝早くから失礼します~」 「今起きたばっかりなので、こんな

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          金魚に恋した夏の日

          *金魚に恋した夏の日 私は、雨上がりの虹と同じくらいに金魚を愛している。 と言っても、自宅や実家に金魚用の立派な水槽や温水管理用のポンプなど充実した設備があるわけではない。 一言でいえば "夏限定の金魚好き" なのだ。 初めて付き合った彼氏も、 二番目に付き合った彼氏も、 三年間付き合った彼氏も、 とにかく夏のデートの時には金魚が綺麗に展示されているスポットを探して欲しいとお願いし、都内はすみだ水族館から~日本橋、金魚坂、足を延ばして大阪の金魚cafeまで、ただひたすらに

          金魚に恋した夏の日

          憧れのメゾピアノと100均のマニキュア~はなのかんづめ Ep.3~

          *憧れのメゾピアノと100均のマニキュア 90年代に生を受けた田舎の女子達にとって、 ナルミヤ・インターナショナルが生み出したアパレルブランドは憧れの頂点に君臨していた。 クラスで目立つ女の子グループの私服は、必ずと言っていいほど駅前の百貨店で買ったメゾピアノやエンジェル・ブルーであったし、学生時代に私を悩ませた水泳の授業で使うプールバッグもクラスの最先端を行く女児たちは、そのアパレルブランドのショッパーを使っていた。 →記憶が曖昧だが、昔の子供服のショッパーはスタイリッ

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