利賀村のポップアップ古民家レストランで一流料理人の極上の味を〜「YOCO(ヨコ)」
春は山菜や野草が芽吹き、夏は濃い緑が広がり、秋は豊富な山の幸に恵まれ、冬は雪に閉ざされるも幻想的な景色が生み出される――。
四季折々の豊かな自然を全身で感じられる富山県南砺市利賀村は、今、富山の一流の料理人、そして富山の食を求めるグルマンの注目のエリアとなっています。
その流れをけん引するのが、2020年12月にオープンした「L’évo(レヴォ)」。
そして今年5月、また新しいレストランが登場しました。
県内の一流料理人が交代で腕を振るうポップアップ専門レストランがそのお店、「YOCO(ヨコ)」。
オーナーは富山市でレストランワイン専門店を営み、シニアソムリエである浅野大輔さん。
毎週火曜日、週1回のみのオープンで、料理人は週ごとに変わりますが、その料理に合わせて浅野さんがアルコール・ノンアルコールドリンクのペアリングを考えて提供します。
さて、そんな気になるレストランに行ってきたのは、先日のこと。
料理を担当するのは海老亭別館の村健太郎さん。
村さんは、4年前にそれまで営んできた店を閉め、料理の腕をさらに上げるべく研鑽を重ね、この秋、富山市内に「海老亭別館」を新たに開店予定で、今はここヨコでしか村さんの食事にをいただけないというなんともプレミアムな日に当たりました。
さあ、プレミアムな宴の始まりです。
さりげなくあしらわれた花は、庭先で摘んできたアサツキ。かじってもいいですよ、と浅野さん。
先付けは胡麻豆腐 わらび昆布締め 甘エビ わさび。わらびは近隣でとれたもの。胡麻豆腐はわらび粉で固めているので、弾力がすごい。富山の山海の幸を凝縮させた一品。これに合わせたのは山菜と醸した自家製ジンリッキー。ふわっとグラスを近づけるだけで春の名残の香りが。
のどぐろ飯蒸 こしあぶら 胡麻。上品に脂ののったのどぐろにこしあぶらご飯をのせて飯蒸に。ものすごくバランスのいい味わいに頬が緩みます。こしあぶらの素揚げの香ばしさもいいアクセントに。Pistus Etna Rosso 2018とともに。
真子鰈 氷見鮪のお造り。穂紫蘇を入れた醤油と合わせると、濃厚な鮪もさっぱりといただけます。真子鰈は塩昆布をのせて。この食べ方、まねしたい!
椀は毛蟹真薯 青柚子。ほとんどつなぎのない、まさに蟹を丸ごと食べているかのような真薯。まずは出汁を味わって。次に蟹の身を。お箸を入れると中には蟹味噌が。最後はお出汁に溶かして青柚子とともに、と何通りかの味わいを楽しめます。毛蟹はもちろん富山産。お造りと真薯はSassaie 2013と。
鯵 生姜 葱 甘醤油。二つ目のお造りは、富山らしく甘醤油につけて。ロゼのようにも見えるオレンジワインのArtisan 2020との合わせ技はさすがです。
強肴として出てきたのが、鱧焼霜 チリ酢 深層水トマト とうもろこし天。芳ばしい皮にねっとりとした甘みのある身の鱧。一口ごとに至福。周りを彩るとうもろこし天も、小矢部の深層水トマトへの仕事も素晴らしく、初夏ならではの贅沢な一品でした。
庄川鮎 蓼酢。動きのある盛り付けは圧巻。蓼酢にはお米を入れることで濃度を出して鮎に合わせやすくしてあります。鱧に鮎は氷見のSAYS FARMのChardonnay2018とともに。
富山の池多牛のランプ 酢橘醤油 独活。富山市のブランド牛池多牛のよさを引き出した見事な火入れ。かむごとに肉のうまみが口いっぱいに広がります。さっくり歯ごたえのあるほろ苦い独活とのコントラストもいい。ブルゴーニュのワインMorey Saint Denis2014と。
丸茄子含め煮 茗荷 青柚子。じっくりと出汁が染み込んだ茄子はトロトロで、もうたまりません!
利賀蕎麦 たたき蕨 こしあぶら。利賀でとれる地物のそば粉を使って打った蕎麦。ねっとりとした蕨とコシアブラの天ぷらとともに。このひと椀で利賀の自然の恵みを満喫。日本一標高が高い場所にある酒蔵、三笑楽の純米吟醸と。ちなみにこしあぶらこの時期もう終わりでは、と尋ねると、地元の名人が内緒の場所を知っていて、とってきてくださるとのこと。地域人との連携も、こういったレストランではかけがえのない宝ですね。
さて、これで終わりかと思いきや、2階に場所を移してさらに宴は続きます。
美しい窓はまるっきり昔のまま、と解説いただいたのは、この古民家の元オーナー。今回ご縁があって、同席させていただいて、このあたりの生活のこと、家のこと、いろいろとお話をお伺いすることができました。
家にまつわる話に花が咲いていると、出てきたのがお食事。白御飯 蛍烏賊沖漬け 鮪漬 じゃこ山椒。五箇山揚の赤だし、水茄子浅漬け きゅうり粕漬。釜で炊いたご飯は近隣の農家さんのコシヒカリ。やっぱり富山のお米は美味しい!御飯の友はたくさん出てきましたが、お米と赤だしで十分幸せ。もちろんすべていただきましたが。そしてここにもお酒が。シェリー酒Fino del Puerto 1/143。
宴の最後はグレープ・フルーツ・ゼリー。まるで本物の果実を食べているようなジューシーさ。さっぱりと食後の余韻を楽しみました。
今回はアルコールペアリングということでいろんなお酒を合わせていただきましたが、ノンアルコールペアリングのチョイスも魅力的でした。
ドリンクを用意する浅野さんは「ノンアルコールペアリングはまるで千本ノックをやっているよう」といいます。担当される料理人からメニューが上がってくるのが直前らしく、そこから試行錯誤が始まるとか。
聞いただけでものすごく大変そうですが、その顔は達成感にあふれ、楽しげな雰囲気も漂わせていました。
そんな浅野さん、将来的にはこの地で自らのワイナリーを作るんだそう。
やりたいことへ向かって一歩一歩。まだまだ利賀村での挑戦は続くよう。でもそれが楽しいと浅野さんはいいます。
まだまだ進化する利賀村のグルメシーン。これからも注目していこうと思います。
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