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8/25 2軍選手達の殺気
野球ネタが続いている気がする……。
とある秋の1日。
僕達は某強豪校のグラウンドに立っていた。
某予選大会にて優勝校と大接戦をしたことで見方が変わったのかは分からないが、これまでにない強豪校とのマッチメイクが増えていた時期だった。
広いながらもしっかりと水平に整備されたグラウンド。内野には黒土が巻かれており、選手達がホースで水撒きをして程よい湿り気を作り出してくれている。
当然のように雑草一つ生えておらず、足を踏み入れれば叩かれてアスファルトのように固くなった土がお出迎えをしてくれた。
もう色々と綺麗過ぎて感動したものだ。内野には甲子園の土が混ざっていると聞いた時は興奮したし、しゃがみ込んで一掴みして持ち帰ろうかと画策したものだ。
そんな感情に冷水をぶっかけたのが監督の一言だった。
「この試合に1軍は出てこないぞ」
特段の驚きはなかった。
強豪校は忙しいのだ。
評価を見直されつつあるといってもたったの一戦。それも勝った訳ではないし、相手からすれば本気で戦う程のことではないというだ。
「地方大会のベンチ入りメンバーを決めたいみたいやし、出てくるのは1~2軍の当落選上の選手中心な」
この時期は秋の県大会を終えて、春のセンバツを懸けた地方大会直前というのもあって、僕達は体の良い試金石として扱われたということだった。
漫画だと舐めて見下した態度を取る2軍を、僕達が圧倒して1軍が出てくる展開となるのだが、現実とは厳しいものでちっともそんなことはなかった。
なんというか怖かったのをよく覚えている。
殺してでも席を奪い取るという剥き出しの感情を浴びせられて鳥肌が立った。
今日1軍に帯同せず格下と試合をさせられる自分が許せないという憎しみ。
何よりもベンチの声出しも凄かった。隙があればそいつに代わって自分が試合に出るんだッ!!と強い意思が見えた。
そしてグラウンドに立つ選手達もそれを受けて背負いながら戦う。
これが甲子園へ行くチームか………強い訳だ。
チーム内で凄まじい循環が起きているのはよぉく分かった。
試合自体は拮抗しており僅差での敗戦だったが、2軍とはいえ強豪校と引き分けたという満足感よりも疲労の色がなにより強かった。
バケモノと試合をした。
そんな印象を受けた。