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読書は「割高な娯楽」になったのか

「印税稼いで三十年」は小説家の鈴木輝一郎氏が「小説作法」以外のあれこれをてんこ盛りで明らかにしている本。作家本人による書店営業回り、編集者との付き合い方、いささか偏執狂的な原稿バックアップなどが生々しくて、読書好きにはとことん面白い。「いつ業界から消えてもおかしくない」という作家のプレッシャーが壮絶なものだとわかる。

この本の中で気になった記述が「月に1000円程度払えば動画が見放題になるいま、本を買って読むというのは割高な行為になったのだ」。即ち「だから作家として食っていくのは並大抵のことではない」という文脈になっている。

かねてより私は「映画は1本観て2時間でおしまいだが、本は1冊で数日間はたっぷり楽しめる」と思っていたが、なるほど、現代においてフラットに動画配信と読書を比較すればそういう考え方になるのか。娯楽としての映像系にはまったく関心がないので、考えもしなかった。

こんな時代だからこそ書店・出版業界を応援しなくてはいけないとは理解している。しかし年間300冊を読破するペースのいま、1冊1000円と仮定してそのすべてを新刊で買い揃えれば30万円。しかも増殖する読了本を狭いマンションのどこに置くのか。なるほど、確かにお高い娯楽になっているのである。

税金をしっかり納めているのだから正しく図書館を利用することは犯罪ではない。それなのにいつもどこかで感じているこの“うしろめたさ”とどう折り合いをつけていけばいいのか。
(21/10/15)

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