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「大変な時代」をようやく実感

 メディア企業で禄を食む者として告白するのがかなり恥ずかしいのだが、このたびやっとAmazonのfire tv stickを購入して、コンテンツビジネスの最前線を実感することになった。

 買い物が便利になるので数年前にAmazon Primeに加入、Prime Videoの存在も知っていた。それでも、映像コンテンツをiPhoneでチラ見するだけで、テレビに投影することまではしていなかった。「テレビ画面はテレビ放送を見るためのもの」という“意地”があったからだ。

 宗旨変えしたきっかけは単純だ。長男が「トップガン/マーヴェリック」にドはまりして、「凄い映画だ。絶対に見たほうがいい!それまでに前作も復習しておく方がいい」と大騒ぎした。「そんなに勧めるなら、前作の復習はまず大画面でやらないと、勿体ないなあ」と心が動かされたのだ。つまり、ケチなのだろう。しかもその週末がちょうどAmazonのタイムセール祭りになっていて、定価よりも1500円も安かったのである。やっぱりケチ。
 
 テレビ番組と違って、自分の都合ですき間時間に見始めることができる。しかも無料(すでにプライム会員であるため)。ボタンひとつで、いちいちレンタル店へ行く手間もない。「トップガン」だけでなく「シン・ゴジラ」「ブルース・ブラザース」など見返したい旧作は山のようにある。それだけはない。TVer、YouTubeなど、これまで自分の視野に入っていなかったサービスも気になってきた。「そもそも、お前はそんなことでよかったのか?」というツッコミは甘受する。

 それでも、いきなり“首までどっぷり沼にハマる”ことはないだろう。「2時間の映画を見る」ということは、「貴重な自分の時間が2時間奪われる」ということだ。読書時間が削られることほどストレスになることはない。Netflixなどのサービスに追加で入ることもないだろう。

 1日は平等に24時間。リビングの大型モニターはひとつ。それを奪い合っているのが、テレビ、動画ビジネス、ゲームなどのコンテンツビジネスだ。読書・漫画も、時間をそこにかけるという意味では同一の地平にいる。メディア企業に在籍する者としてそんなことは30年前から理解しているつもりだった。それでも、いざそのための“オモチャ”を手にすると、そのワクワク感は即ちテレビ局ビジネスの将来性と表裏一体であることを再確認する。
 
 最終的な勝負を決するのはコンテンツの優劣だ。テレビ業界は、いまでこそ長年のノウハウで培った知恵とアイデアでリードを保っているが、いずれは予算の多寡も問題になってくる。本当に大変な時代を迎えているのだ。
(22/5/30)

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