ファンタジー小説考
本屋大賞にノミネートされていた多崎礼「レーエンデ国物語」の第1巻を先日読了した。SNS読書メーター方面でもやけに好評とあって図書館で予約をしていたもので、現在は第2巻の冒頭100Pあたりである。既刊は4巻で、5巻で完結する構想だそうだ。
うーむ。
そもそも私はファンタジーというものがまったくダメ。「架空の竜や魔法使いが活躍して、それが何なのだ?」と思っている。「それを言ったら、どんなジャンルの小説だってそうなるだろ」という突っ込みは、理解する。しかし、とにかく「どーでもいい」と思ってしまうのだから、どうしようもない。
「レーエンデ国物語」もそうだ。架空の王国の中に独自文化を持つレーエンデ地方があって、物語はその興亡を何世紀にもわたって綴っている(らしい)。これまでのところ竜こそ出てこないが、不思議な風土病や幻想的な動植物を登場させることによって独特の世界観を構築しているところなどはファンタジーの王道か。王国とレーエンデ地方の見取り図が掲載されているので、折に触れてこれを見返しながら読み進むことになる。
それにしても。ストーリーとキャラクターがなんとも単純でステレオタイプなのだ。「私にとってのいい小説とは、プロット、文体、キャラ、熱気、共感の最低2つがあること」と思っているが、本作で楽しめたのは“熱気”だけかもしれない。それも「書いている作家本人」と「一部のファン」によるものがぼんやりと伝わってくるだけのもの。
出版社で長年文芸を担当していた父がかつて、ファンタジーの名作トールキン「指輪物語」について「結局は書いている本人がいちばん楽しいんだよね」と話していたことを思い出す。
それにしても「レーエンデ物語」、どうしてこんなにもてはやされているのだろう。これがチープな装丁の文庫版ライトノベルとして売られていたらここまで評判にはなっていないのではないか。売り方が上手かったことは確かである。
つまりファンタジーとは「この世界観を楽しめるかどうか」にかかっている。自分に理解できないからといってあまり目くじらを立てるのもミットモナイのかもしれない。とりあえず第2巻はこのまま読み進めるけどさー。
(24/4/29)