小説を読む愉しみ〜千早茜さんを読んで
(プチネタバレあり)
千早茜さんの「マリエ」を面白く読んだ。
直木賞受賞作「しろがねの葉」は主人公に感情移入できず、特に感心もしなかった私。しかし本作ではその小説家としての上手さに何度も唸らされた。
主人公が夫と連れ立って役所に離婚届を提出する冒頭部分ですぐに小説らしい端正な文章が続くことに気づく。「ああ、本を読むことの愉しみのひとつはこれだなぁ」としみじみ思わされた。
連作短編集として雑誌に連載されたもの。勝手な理屈で離婚を切り出した元夫だけでなく、主人公が取る行動もかなり身勝手なものではあるが、そんなアラフォー独身女性の心情を、還暦オヤヂ(私)がしみじみ読んで楽しめる。これぞ良質な読書体験だと思う。
あまり意識してこなかった作家さんだが、著作はそこそこ多い。以前読んだ食べ物についてのエッセイは記述がいちいち鼻について好きになれなかったが、小説をもっと追いかけてみようっと。
(24/2/11)
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