明治・大正から「画鬼」をしのぶ【感想文】「星落ちて、なお」澤田瞳子
(ネタバレあり)ド派手な大傑作ではなくても、作者のレベルの高さをしっかりと味わえる作品。文書と言葉遣いがいかにも時代小説仕様でテーマにマッチする。それでも不思議とスラスラと読み進むのに支障はない。あ、明治以降を描いているから「時代小説」とは呼ばないのか。
タイトル通りに、影の主人公は父・河鍋暁斎。冒頭で死去していながらその存在感は圧倒的。章ごとに進む時代の流れが感慨を呼ぶ趣向も良かった。読了寸前に表紙絵が暁翠筆だったと気づいた。NHKあたりがドラマ化しそうな予感。
お気に入りのセリフ。「この世を喜ぶ術をたった一つでも知っていれば、どんな苦しみも哀しみも帳消しにできる。生きるってのはきっと、そんなものなんじゃないでしょうか」
(21/8/6)