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すでに「第三次世界大戦」に入っているのかもしれない

 私が報道局の外信部にいたころから“お付き合い”してきた長年のシリア内戦があっけなく終わった。アサド大統領はロシアに出国、事実上の亡命をしたらしい。

 背景には、政権を支えていたロシアがウクライナ戦争のために支援ができなくなったこと、そしてもうひとつの支えであるイスラム教シーア派組織ヒズボラもイスラエルとの戦いで疲弊してきた、という側面があるらしい。そう、このように世界情勢は通奏低音のように影響を与えあっているのである。

 ひところ、第一次世界大戦について関連書籍を読むなどの勉強をしたことがある。日本がほとんど参戦しなかったため、第二次世界大戦(太平洋戦争)に比べるとあまり馴染みがない感覚の歴史。しかし欧米では驚くほどの犠牲者が出て、その爪痕は第二次世界大戦だけでなく現代政治にまで痕跡があると知ったからだ。
 
 それにしても第一次世界大戦は、原因といい過程といい、一筋縄ではいかない複雑さだ。あちらこちらに戦線が飛び火・拡大して、その理由もさまざま。「ああ、だからこその“世界大戦”なんだな」と思わせられる。

 翻ってみれば現在の世界情勢もこれに近いのではないか。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの衝突から拡大する中東の紛争。シリアのアサド政権の崩壊もその1シーンか。背景には内向きになったアメリカの姿勢と米中の対立があり、これが台湾や北朝鮮などにどう波及するか、まったくわからない。

 つまり。

 いまはまだ明確に意識できていなくとも、後年の歴史的視点に立てば、これはもう広義の「第三次世界大戦」が始まっているのではないか。

 報道局を離れた定年再雇用なので外信ニュースも「ああ、歴史が動いているなあ。現場の後輩は大変だなあ」と他人事のように見ているが、いやいや、これは日本の安全保障の問題になってくることかもしれないのだ。
(24/12/9)
 

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