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「お金儲け」は悪なのか?
スポーツの世界でビジネスをしていると「スポーツを金儲けに使うな」「スポーツで稼ごうなんてけしからん」といわれることが、時々ある。
でもぼくは「お金を稼ぐこと」って絶対に必要で、なにをするにも無視できないことだと思っている。
お金がない。儲かっていない。そういう業界は、どんどん空気がギスギスしていく。これはスポーツ業界で20代を過ごすなかで、痛烈に感じてきたことだ。
ずっと「儲からない」業界にいた
ぼくは物心ついたときからずっとスポーツの世界にいた。
小学生からバスケをはじめ、中学時代は関東で指折りのスター選手だった。大学を卒業後、アメリカのプロキャンプに挑戦し、挫折。その後はストリートバスケリーグに所属したものの、くすぶったまま、26才で選手を引退した。
スポーツ業界は、はっきり言って儲かっていない業界だ。
アメリカから帰国後、ぼくはバスケのアパレルショップで働いた。月給は15万。1年半ほど働いて、入社4ヶ月後には、店舗での売上成績1位になっていた。それでも最後まで、給料は1円も上がらなかった。
所属したバスケリーグの経営も、とても苦しかった。
ぼくは選手をしながら営業もやっていたんだけど、最後はいよいよ苦しくなって「営業1本に絞ってくれ」と通告された。スタッフとして一緒に働いていた仲間は、3カ月も給料が出ていない状態だった。
いまは当時よりもよくなってきてるけど、やっぱり苦しいのには変わりない。
決算発表を見るとわかるんだけど、いまもJリーグ・Bリーグのクラブは6〜7割が赤字経営。親会社の資本に頼って、なんとかやっている。
搾取するのではなく、マーケットを大きくする
ぼくは選手を引退したあと、人材会社とWEB会社を経て、2011年に起業した。WEBマーケティングやクリエイティブを通して、スポーツクラブの経営をサポートしてきた。いまはスポンサーマーケティングにも力を入れている。
「お金儲け=悪いこと」と思う人は、お金儲けに「搾取」みたいなイメージがあるのだと思う。お金がないところから、無理やりお金をとる、みたいな。
それこそ、今のスポーツ業界は決して「お金のある業界」じゃない。だからこそ「なんで金稼ごうとしてんだ!」という反応をする人もいると思う。
初めてスポーツ業界でビジネスをやったとき、ぼくらはチケット販売のためのLP(ランディングページ)を、1案件3万円で売っていた。
LPの相場はふつう40~50万円ぐらい。考えられないぐらいの破格だ。
ずっとそんなことをしてたら、ぼくらも生きていけない。でも当時のスポーツ業界は今よりもっと苦しくて、デジタル化も進んでいなかった。だから、まずは安くして、受け入れてもらうしかなかった。
つくったLPをちゃんと集客につなげて「何倍もの価値があるんだよ」って示す。次からは、それに見合った金額をいただく。そうやってビジネスを成り立たせてきた。
これに対して「不当に値上げして儲けてる!」って言う人は、誰もいないと思う。
ぼくにとって「お金を稼ぐ」ことは、「マーケットを大きくする」ことだ。
自分だけ、ぼくの会社だけが稼ごうとしてるんじゃない。そういう「ただお金が横に移動するだけ」のビジネスには未来がない。それこそ、搾取みたいなことが生まれてしまう。
でも「マーケットを大きくする」という発想なら、そうはならない。「本当はすごく価値があるのに、それを発揮しきれていないもの」をサポートして、価値を広めて、新しい人を市場に巻き込んでいく。
ぼくらの仕事によって、新しいお客さんを増やしていく。
そうすれば誰も不幸になんてならない。むしろ、関わった人みんなが得をするお金の稼ぎ方だ。本来、ビジネスっていうのはそういうものなんだ。
当たり前に生きるためにはお金がいる
業界の苦しさはずっと感じていた。ただそれでも、若いころは「自分ひとり食べていけるぐらい稼げたら、それでいい」と思っていた。ぼくがお金を稼ぐことに、より強くこだわるようになったのには、大きな理由がある。
それは、家族の存在だ。
ぼくの娘は「1型糖尿病」という原因不明の病気を抱えている。病気がわかったのは去年、娘が4歳のとき。
それ以来、毎日欠かさず注射を打って、彼女は命をつないでいる。1型糖尿病は、体内の血糖値をコントロールするインスリンという物質がつくられなくなってしまう病気。注射によって血糖値を調整しないと、生きていけないんだ。
注射は毎食前と、おやつの時、寝る前。最低でも1日4回。急に血糖値があがっちゃうこともあるから、だいたい7回ぐらい打っている。
注射さえしていれば、ふつうの暮らしはできる。「なんで注射を打たなきゃいけないの?」って話はたまにするけれど、本人的にはとても元気に過ごしてる。ほんっとにかわいくて、素直で、とてもいい子だ。
ぼくは娘に、ずっと「当たり前の幸せ」を感じていてほしいと願ってる。友達と遊んで、好きな人ができたりもして、悩んだり、怒ったり、自由に夢を描いたり。のびのびと大きくなっていってほしい。
そのために、絶対に必要なのが「お金を稼ぐ」ことなんだ。
娘は、病気のせいで7歳までしか保険に入れない。糖尿病は将来、いろんな病気を併発するリスクがあるからだ。だから7歳までに入った保険で、生涯の医療費をまかなうしかない。
小児じゃなくなったら、医療費も無料じゃなくなる。生きるための注射代もキットも、すべてにお金がかかる。
娘がもし将来「結婚したい」と思ったとき、そのことを経済的に負担だと思われてしまう可能性もゼロじゃない。そんなことには、絶対させたくない。
「愛の力で乗り越える」ことも、もちろんできると思う。でもやっぱり、経済的な苦しさはじわじわと愛を蝕む。だから今のうちに貯蓄しておきたくて、保険をつかって積立をしているんだ。
未来が少しでもよくなるように、稼ぎたい
1型糖尿病は、今のところ完治させられる治療法はない。
でも、少しずつ状況はよくなってきてる。
娘が生きていくために、毎日打たなきゃいけない注射。いま、それを「錠剤」にする研究も行われてる。あとは注射のままでも、痛くない針にするとか。そういう研究をしている日本のベンチャー企業もある。
ぼくは医者でも研究者でもないから、病気をなおしてあげることはできない。でも、金銭面でそういう研究を支援することで、少しでも貢献したい。
だから、ぼくはお金を稼ぐ。
この話は、全社会議でもしたことがある。稼ぐための方法は、ぼくにはこの会社しかないから。「この会社で儲けたいです」っていう話を、みんなにもした。
神妙な面持ちだったり、子どもがいるメンバーは大きく頷いてくれてたり。反応はさまざまだったけど、受け止めてくれる仲間がいるのは、本当にありがたい。
お金があることは、「選択肢」があること
うちには娘ちゃん以外にも3人の子どもがいる。
いちばん下の男の子は、自閉症と知的障害の診断をされた。どうしてもふつうよりは手がかかるし、お金もかかる。知的障害だとこれまた、保険も7歳までしか入れない。
でも、そういう子どもって、なにか1つの分野に秀でていることが多いんだ。
この先、彼にとってのそれが見つかったとき、ちゃんとサポートできるようにしておきたい。音楽の才能があるのに「ピアノは高くて買えないから、諦めろ」ってことにはしたくない。海外のほうが生きやすいのなら、なんの迷いもなく行かせてあげたい。
それにはやっぱり、お金が必要だ。
お金があることは「選択肢があること」だと思う。
「やりたいな」って思ったことがちゃんとやれる。それはすごくハッピーなことだ。ぼくはバスケ選手時代、ありがたいことに、やれるだけの挑戦はさせてもらった。アメリカのリーグに挑戦することも許してもらった。
最後は大きな挫折をしたけれど、自分で選んだ道だったから、立ち直れた。
やっぱり自分の子どもたちにもそうしてあげたい。それには、たぶんぼく以上にお金がかかる。彼らが不自由なく、選択肢の多い人生を送れるように「稼がなきゃいかん」と思うんだ。
選択肢があって、自分のやりたいことをやって、その人の特性を活かして幸せに生きていく。いまはそれが「ぜいたくなこと」みたいになりつつある世の中だ。
でも本来、それは当たり前のことだし、そうあるべきだと思う。
「みんなつらいんだから我慢しろ」じゃなくて、工夫して「稼ぐ」ことで、当たり前の幸せをつくっていきたいんだ。
助けられる人をどんどん増やしていく
これはちょっと特殊かもしれないけど、ぼくは会社のメンバーや家族だけじゃなくて、世の中にたくさんいる「同じように苦しんでる人たち」に対しても、なんとかして力になりたいと思っている。
セカンドキャリアに苦しむ元アスリート。スポーツが好きでがんばってるのに、なかなか報われない人。1型糖尿病や、知的障害を抱える人。
そういう人たちのことも、なんというか、他人とは思えないんだ。
自分や、自分の子どもがきっかけで、その世界のことを知った。めちゃくちゃ大変だし、解決すべき課題があることも知ってしまった。そうなったら、もう無視できない。なんとか、よくなるためのアクションをしていたい。
こう言うとすごくいい人みたいだけど、別にそういうわけじゃない。
周りが良くなると、ぼくもハッピーになるから、そうしたい。仕事も家族も。究極的には、エゴで動いてるだけなんだ。
やりたいことは宣言することで実現する
こうやって、お金や家族の話をオープンにしたのには理由がある。
世の中に対して「宣言」がしたかったんだ。
やりたいことは、ぼーっと思っているだけじゃ実現しない。病気だって、スポーツ業界のことだって、ぼく一人で解決できることじゃない。
でも「こういうことを考えてます」って発信すれば、同じような考えや課題をもつ人とつながれる。「それいいよね」って思ってくれる人たちは、世の中にたくさんいる。そういう人たちを集めていく。求心していく。
人が集まれば、新しい市場ができる。市場が大きくなれば、いまはできないことも、どんどんできるようになっていく。
ぼくらの会社は先日、ミッドタウン八重洲で、スポーツビジネスのイベントを開催した。4日間で、のべ400人以上の方が参加してくれた。
「ミッドタウンを貸し切ってスポーツビジネスのイベントをやる」なんて、ぼくらがスポーツ事業をはじめた2016年ごろには、絶対に無理だった。そんな発想すらなかった。3万円でやっとLPが売れるぐらいだったんだから。
今回のイベントができたのは、いろんな人が協力してくれたからだった。
普通は、場所を借りるだけでもすごくお金がかかる。でも、今回は三井不動産さんが場所を提供してくれて、ATTIQUEさん、イベレジさんが運営もサポートしてくれた。
ぼくらは集客のための広告や、当日のコンテンツ作り、人のアサインだけに専念できた。本当にありがたいし、ラッキーだったと思う。
でもそれは、やっぱり発信してたからなんだ。
「スポーツ業界ってもっとこうしなきゃダメだよね」「スポンサーってもっとこうあるべきだよね」って思ってる人はたくさんいた。でも、一人じゃなかなか変えられない。「難しいかな」って、尻込みしてしまう。やろうと思っても、やり方がわかんなかったり。運もあると思う。
でも「この指とまれ!」の旗さえ立てれば、協力してくれる人たちはたくさんいる。ぼくは格好つけだから、言っちゃったらもう後には引けないし。笑
だからやっぱり、実現したいことは言わなきゃ駄目なんだ。
スポーツ界にも、まだまだ課題はある。セカンドキャリアの問題なんかは、やっぱりまだニーズが少なくて、ビジネスになりづらい。だから少しずつ、自社で元アスリートのメンバーを育てて、活躍できるようにしたりしてる。
病気のこともそうだ。いまはビジネスにならなくても、ぼくが中心になって人を集めることで、市場ができていく可能性がある。そうしたら、世の中がもっと良い方向に動いていくかもしれない。
ぼくはそういう大人になりたい。
泥臭くても、みんなを幸せにできるような「カッコいいお金儲け」を、これからもしていきたい。
この場を借りて、そう宣言させてほしいんだ。
*
最後に大事なお知らせ。
ぼくらと一緒に「稼ぐ」を実現してくれる、投資家の方々を探しています。
いまのスポーツ市場、ポテンシャルも熱量もある、かなりおもしろい業界です!
少しでも興味をもってくださった方、ぜひDMでご連絡ください!!
僕らがやろうとしてるスポーツビジネスは、クラブをハブとしてスポンサー企業、ファン、行政を繋いだ経済圏を創ること。要はクラブ(アリーナやスタジアム)を起爆剤とした地方創生や地域活性化の話。全然デカい話じゃない。スポーツにはその力がある。僕らはそれをサポートする。やり甲斐しかない!
— 平地 大樹(ひらちたいじゅ)/プラスクラス代表取締役 (@halloffame81) August 12, 2021
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![平地 大樹(ひらちたいじゅ)/プラスクラス代表取締役](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104598428/profile_7e6ece7abc50b513f096592ad395e866.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)