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葛飾北斎と俵屋宗雪をつなげる「波」の表現 @東京国立博物館
下の画像は言うまでもなく葛飾北斎の代表作、富嶽三十六景の一枚『神奈川沖浪裏』です。ダイナミックな構図で、大きな波は海外でも「グレートウェーブ」と呼ばれて、葛飾北斎の代名詞とも言われています。
そのためか、一瞬の波の情景を切り取ったこの描写は、葛飾北斎が独自に編み出したもの……だと思っていました。それは間違いないことなのですが、当然のことながら、葛飾北斎といえどもゼロから全てを生み出したわけではないんですよね。
そんなことを感じさせてくれる作品が、現在(2023年1月4日)、東京国立博物館に展示されていました。
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俵屋宗達の後継者、俵屋宗雪の『龍虎図屏風』です。タイトル通りに二隻の屏風の右側(右隻)に龍を、左側の左隻に虎を描いた勇壮な絵です。
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英語名『Dragon and Tiger』
天から水上に舞い降り身をくねらせる龍と、竹林を背景に川辺で手を舐め毛づくろいをする虎を描きます。筆者の宗雪は、京都で活躍した絵師・俵屋宗達の後継者で、後に加賀前田家の御用絵師となりました。可憐な彩色画を多く残した宗雪の貴重な水墨画作品です。
Sōsetsu was the official painter of the powerful Maeda clan of Kaga Domain. Known for his many colorful paintings, this work is a rare example of one of his ink paintings.
特に右隻をよく見ると、龍が巻き上げる波が描かれています。その波と波しぶきが、同じとまでは言いませんが葛飾北斎の神奈川沖浪裏に描かれた波と似ていると感じさせます。
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屏風の向かって左側の左隻には大きな猫のような、おそらく想像で描いた虎の目の前を流れる川から、水しぶきがたっています。
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いずれの水しぶきも、葛飾北斎の『神奈川沖浪裏』のような目立つ存在ではありませんが、龍と虎をよりいきいきと感じさせるために必要なアイテムで、緊張感や緊迫感を増すのに欠かせないものです。
そんな俵屋宗雪が活躍したのは、1640年頃からです。それまでは俵屋宗達の工房で働いていたと考えられていますが、1642年に法橋という称号を(おそらく京都の朝廷から)得て、1643年には加賀前田家の御用絵師となって、金沢へ下ったとされています。
一方の葛飾北斎が生まれたのが1760年頃。18歳頃に浮世絵師・勝川春章に弟子入りし、34歳の頃に破門されたとも言われます。その後、34歳頃からの4年間は「北斎宗理」の号を使うようになりました。この「宗理」とは「俵屋宗理」のことで、初代の「俵屋宗理」をどのくらい意識して名乗り始めたのか分かりませんが、葛飾北斎が琳派の画法を積極的に学んだか、採り入れようとしたのは、間違いないようです。
■俵屋宗雪の代表的な画題
前項の『龍虎図屏風』をはじめに見ると、俵屋宗雪が、ああした勇壮な絵を得意としていたかのように感じますが、実は下のような草花を描いた屏風を多く残しています。
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緑を薄塗りした金地の野辺に、萩、薄、女郎花、芙蓉など咲き乱れる秋の草花。地面の起伏と草花の布置とが協調して波状の動きを作り、澄んだ秋の大気が吹き抜けます。 宗雪は、あの俵屋宗達の後継者であり、はじめ京都で活躍し、後に加賀金沢で前田家に仕えました。
These screens feature a lush autumn scene of bush clovers, eulalia grass, patrinias, and cotton rosemallows blooming across a field of gold. The careful positioning of the plants compliments the gently rolling hills in the background. The painter, Tawaraya Sōsetsu, was the successor of the renowned artist Tawaraya Sōtatsu.
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葛飾北斎が特に琳派から影響を受けたのだ! とことさらに言うこともありませんが、北斎も草花を多く描いていますよね。琳派というか先人から、どんな影響を受けて、北斎独自の草花の絵が完成していったんだろう? といった視点で、鑑賞するのも面白いかもしれません。
↓ ちょうど良さそうな特別展が、すみだ北斎美術館で開催されますね
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