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酢酸菌 -発酵の基本知識-⑪

酢を作ることに使われる酢酸菌

酢酸菌が使われている発酵食品で代表的なものはやはりその名の通り「酢」が一番のイメージですが、その酢もさまざまな種類があります。

酢の製造には「酢酸菌」が大きく関わっており、アルコールやブドウ糖をエサに酢酸を生成する好気性菌の総称のことを指します。

好気性菌とは空気を好み、空気がある場所で繁殖します。
また、酢酸菌は酸とアルコールの耐性があり、生育の際はアルコールの表面に膜を張るように広がっていきます。

酢を作りだす酢酸菌で代表的な菌は「アセトバクター・アセチ」で自然界にも見られる菌で、低温殺菌・濾過滅菌していない作りたてのリンゴのシードルやビールにも見られます。

伝統的な酢を醸造している蔵元では、原料となる酒を甕や桶などに入れてその表面で酢酸菌を増殖させ酢を製造しており、原料の連携が取れるために、酒蔵などでも酢を製造しています。

日本酒だけでなく、ワインなどでも酢酸菌を利用すると酢(ビネガー)を作ることができます。


酢意外での酢酸菌の利用法

酢意外で利用される酢酸菌で有名なのは「アセトバクター・キシリナム」で、ブドウ糖などからセルロース(食物繊維)を合成します。

主にココナッツを原料としたナタ・デ・ココや、日本では数十年前に一大ブームを巻き起こし、現在ではアメリカを中心とした欧米で人気の紅茶キノコなどはアセトバクター・キシリナムの発酵生成物です。

別名「ナタ菌」とも呼ばれ酢酸発酵の面からみて外菌とされています。


酢酸菌によって作りだされる主な発酵食品

1.       米酢 (原料:米・麹) アセトバクター・アセチ
米を原料として作られる。日本の代表的な発酵調味料の一つで米のみで作られた酢は純米酢といわれている。

2.       ワインビネガー(原料:ワイン) アセトバクター・アセチ
ワインに酵母や酢酸菌を加えて発酵、熟成させたもの。
赤と白があり、目的別に使い分けるとされている。

3.       モルトビネガー(原料:大麦) アセトバクター・アセチ
日本ではあまりなじみが浅い酢だが、主にイギリスで作られる麦芽酢。
魚のフライ用のソースとしてつかわれる。
もともとの原料はビールが酢酸発酵したものだといわれている。

4.       バルサミコ酢(原料:ブドウの濃縮果汁のアルコール発酵物) アセトバクター・アセチ、グルコノアセトバクター・エウロピアス
ブドウの果実を煮詰めて濃縮させ、樽で長期熟成させたもの。
ワインビネガーよりも熟成期間が長く、熟成期間が長い程高価であるとされている。
イタリアでは生産地が厳しく管理されている。
主にモデナ地方とレッジョ地方のものをバルサミコ酢と呼ぶ。

5.       ナタ・デ・ココ(原料:ココナッツミルク(ジュース))アセトバクター・キシリナム
ココナッツの水分に酢酸菌の一種であるナタ菌を加え、発酵させると表面か凝固しセルロース性のゲル状になる。独特な食感はデザートとしても人気が高い。

6.       紅茶キノコ(原料:紅茶) アセトバクター・キシリナム
日本では数十年前の健康ブーム時に大変話題となったが、現在ではアメリカを中心に欧米で人気を持つ発酵飲料。
もともとはモンゴル原産でシベリア地方で伝統的に愛飲されていた。
紅茶に砂糖を加えた培地で栽培されるキノコのようなゲル状の塊で、その様がキノコのようであることから紅茶キノコと呼ばれていた。キノコではない。
アメリカでは「コンブ茶」と呼ばれている。韓国語で菌の事を「KOM」と発音することからそう呼ばれたという説がある。

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