映画レビュー(108)「曲がれ!スプーン」

2009年作品

 上田誠とヨーロッパ企画の戯曲の映画化。2000年の初演に際しては「冬のユリゲラー」というタイトルだった。
年に一度、町はずれのカフェ・ド・念力という喫茶店に集まる超能力者たち。日頃隠している能力を開放して楽しむエスパー・パーティーである。
ところが、そこに一般人がやってきてしまう。さらに彼を取材するはずのオカルト番組のAD女史までもがやってくる。
 秘密を隠したいエスパーたちのあの手この手の悪戦苦闘で笑わせるシチュエーションコメディである。
 2005年に映画化された上田作品「サマー・タイムマシン・ブルース」と同様、よく練られた脚本と、役者たちの好演が観る者を笑顔にしてくれる。そして、若い長澤まさみさんの初々しいことよ。
 番組で科学者から罵詈雑言でバカにされる超能力などのオカルト趣味が、人間が心に秘める夢や希望の暗喩として配置されている。我々は大人になると、そんな夢を見ていたことを心に秘して何食わぬ顔で生きている。まるで超能力を隠して生きるエスパーたちの様に。本当に巧い。
 肩の凝らないハートウォーミングな物語を観たいときには最適だ。
曲がれ!スプーン


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