栗林元

名古屋市出身。 広告会社で、営業、WEBディレクターとして勤務。 体験を生かした小説「神様の立候補」で、平成3年に第二回ビジネスストーリー大賞(テレビ東京/日本経済新聞)佳作入選。 現在は会社を退職し、マイペースで作品を発表しています。 近著は「不死の宴 第一部・第二部・第三部」

栗林元

名古屋市出身。 広告会社で、営業、WEBディレクターとして勤務。 体験を生かした小説「神様の立候補」で、平成3年に第二回ビジネスストーリー大賞(テレビ東京/日本経済新聞)佳作入選。 現在は会社を退職し、マイペースで作品を発表しています。 近著は「不死の宴 第一部・第二部・第三部」

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    小説やシナリオなど、言葉で物語を描くことに関しての気づきや技に関する記事です。 「小説指南抄」は過去記事を、「創作エッセイ」は新しい記事をアップしています。

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    栗林元の小説作品集。1997年から初めたWEBサイト「デジタル文芸」から名前を取りました。サイトは休眠中ですが、創作活動は継続中。

  • 不死の宴シリーズ・公式サイト

    長編伝奇SFシリーズ「不死の宴」の各種情報を発信していきます。

最近の記事

映画レビュー(195)「八犬伝」

山田風太郎の原作を映画化した作品。 実に見ごたえがあった。滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」の物語と、それを葛飾北斎に語る馬琴の折々の実人生が交互に語られる。 こうあってほしいという勧善懲悪の理想を描く馬琴。一方、「東海道四谷怪談」で、理想の「忠臣蔵」と現実の愛憎を描く「四谷怪談」を交互に描く鶴屋南北。「虚」と「実」のせめぎ合いが、作家であることと父親であることの馬琴の迷いを暗喩する。この人間ドラマ部分の見事なことよ。 やがて「八犬伝」の物語を書き終える頃、馬琴には、虚構を通して真

    • 映画レビュー(194)奈落のマイホーム

      シンクホールで地下500メートルに陥没したマンションの住人たちのサバイバルを描いたパニック映画。 よくできているけど、ある意味定石通り。 キャラクターたちも、最初の印象は最悪だけど、困難を通して相互理解していきラストは絆が生じる、という王道中の王道のストーリー展開で、逆にシナリオとか勉強している人にとっては、ある意味予定調和的かも。 ただし、映像的には実にうまく、ラストまで気を緩めることなく一気に引っ張られた。職人的な技かもしれない。 この作品で言いたかったことは、マイホーム

      • 映画レビュー(194)サベージ・クリーチャーズ

        75分の掌編だけどなかなか見せる。 配信オンリーの作品らしい。ファンが作ったような味わいだけど作品的にはしっかり作っている。ホラーファンなら楽しめる。 サイコパスの猟奇殺人もので始まり、ヴァンパイアものとわかってきて、最後はゾンビ・サバイバルもの。 美人コンビのバディものでもある。ポップコーンをつまみながら、ニヤリとして楽しもう。 サベージ・クリーチャーズ

        • 映画レビュー(193)スプートニク

          エイリアンに寄生された宇宙飛行士を治療しようとするヒロイン。そのエイリアンを武器にしたい司令官。そして、再び子供に会おうとする飛行士。彼らを巻き込んで進行するSFドラマである。 このエイリアンって結局何だったの? と考えると物語の解釈が止まってしまう。このエイリアン、それぞれのキャラが心に抱く不安や欲望やトラウマの暗喩になっているのだ。単にエイリアンもののSFとすれば、こんな陳腐な物語はないからだ。 ちょうど「ゴジラー1.0」におけるゴジラが「戦争そのもの」の暗喩であるように

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        記事

          映画レビュー(192)「パルプ・フィクション」

          クエンティン・タランティーノの出世作。アカデミーでは七部門にノミネートされて脚本賞を獲っている。 プロローグとエピローグの間に三つのエピソードを挟んだオムニバス形式。ただし時系列は前後していて、最後まで観たときにパズルのピースが嵌るような作り。いまでは珍しくもないが、当時は斬新だった。デビュー作の「レザボア・ドッグス」もそうだったが、ギャング同志の疑心暗鬼など上手く使ってラストまで引っ張られた。 サミュエル・L・ジャクソンとかユマ・サーマンとか、初めて見たのもこの作品かなあ。

          映画レビュー(192)「パルプ・フィクション」

          映画レビュー(191)私をスキーに連れてって

          1987年、バブルの最中に作られたホイチョイプロダクション原作の青春映画。 内容は今更説明は不要だろう。この時代、私も広告会社の営業で、同じように週末スキーに誘われていた。乗ってた車まで主役と同じカローラ2。 もっとも映画では、大手商社の社員だったり外科医だったりで、バブルなレジャーにウハウハ状態であるが、私は、地方の三流私大から地方の小広告代理店で、扱う仕事も新聞の求人広告からスタートしている。 東京で大きな仕事に携わり、おまけに映画を作るクリエーターでもある関係者たち

          映画レビュー(191)私をスキーに連れてって

          ブックガイド(166)「超合理的ミステリーの書き方」(中山七里)

          三か月で一冊のペースでエンタメ作品を量産する中山七里さんの創作メソッドが赤裸々に語られる! 特に、 「トリックよりも情報開示の順番に気をつける」には、そうだそうだと首肯する私。他にも「説明するな描写せよ」とか、自分の座右と同じだ!とうれしくなる。 ミステリ好きに限らず小説を読みたい書きたい読者にとっては必読だろうなあ。 ※特に、書き始めたばかりで壁に当たっている人などはうれしいかも。 とは言え、単に「作家になりたい」だけの人には少々手厳しい一面もあり。何しろ「作家刑事・毒島」

          ブックガイド(166)「超合理的ミステリーの書き方」(中山七里)

          映画レビュー(190)「マーベラス」

          マギー・Q主演のアクション映画。マイケル・キートンいい味出してるけど老けたなあ感。 アクションがメインだけど、ちゃんとハードボイルドなキャラ設定で、抑えたセリフが雰囲気たっぷり。90年代にミッシェル・ヨーさんで同じような作品観たかったなあと思った。 この手の女性アクション映画、もう一般的になってきて、目新しさはさすがにない。あと一つ、ひねりが欲しかった感あり。 マーベラス

          映画レビュー(190)「マーベラス」

          ブックガイド(166)「まほり(上・下)」高田大介

          大学院の社会学研究科を目指して研究を続けている大学四年生の勝山裕。卒研グループの飲み会で、語られた都市伝説に興味をひかれる。上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。この蛇の目紋は何を意味するのか?  ちょうどその村と出身地が近かった裕は、夏休みの帰郷のついでに調査を始めた。地元の図書館で司書のバイトをしていた昔なじみの飯山香織と出会い、ともにフィールドワークを始める。調査の過程で出会った少年・淳から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されている

          ブックガイド(166)「まほり(上・下)」高田大介

          映画レビュー(189)「僕だけがいない街」

          三部けいによる日本の漫画作品を原作とした映画。 実によくできたストーリー。過去に戻る力(作中ではリバイバルと呼称)を持つ主人公が、過去に戻り自分と周囲の人々を襲う悲劇を回避するサスペンス漫画である。 この手の何度も過去をやり直す系の作品は、もう珍しくもないのだが、このタイムトリップ・タイムリープ系の物語は、人間の心の「過去のトラウマ」「過去の後悔」「取り返しのつかない罪悪感」「もう会えない大切な人」などの「思い出」系のメタファーとして実に使い勝手がいいのだ。だからこそ、心のド

          映画レビュー(189)「僕だけがいない街」

          ブックガイド(165)「首輪物語」(清水義範)

          作者お得意のパスティーシュ(文体模倣)もの。同時にパロディにもなっている。収録作品は以下。 「首輪物語」  キャラクターをすべて犬にした「指輪物語」 魔力を秘めた首輪を捨てに行くチワワ族のモカカと彼に使命を伝えた魔法使いナンダレヤ。ラストの神の言葉に吹いた。 「ティンカーベルの日記」  妖精目線で語られる「ピーター・パン」 「パウダー・スノー」  四姉妹を描く「若草物語」(オルコット)で始まって「細雪」(谷崎潤一郎)に着地する。 「亀甲マン」  マーベルもの。 「あこや貝夫人

          ブックガイド(165)「首輪物語」(清水義範)

          ブックガイド(164)「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT」(上・下)

          時間遡行装置の発明された近未来、人類に良かれと過去に介入した国連は、歴史を捻じ曲げたことで人類絶滅の危機を招いていた。それを修正するために、過去の歴史を正しい流れの適正範囲内に確定していく作業が進められていた。そして、今まさに1936年2月26日の「226事件」がその介入ポイントとなっていた。 この過去に介入するキーマンは、陸軍歩兵大尉の安藤輝三、中尉の栗原安秀、そして陸軍大佐の石原莞爾であった。 国連スタッフ、三人の軍人、誰もが思惑をもって臨むミッションのひりひりするような

          ブックガイド(164)「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT」(上・下)

          映画レビュー(188)「べネシアフレニア」

          ヴェネチアを訪れたスペイン人観光客が次々と殺害される。その陰には街を外国人から取り戻そうとする秘密結社の存在があった。1970年代“ジャッロ映画”へのオマージュとも言うべき作品。確かにダリオ・アルジェントとか、あの時代のホラーの臭いがする。 今、問題になっているオーバーツーリズムが根底にあり、それを利用してエキゾチックな舞台で観光客の誰もが被害者になりうる恐怖を描いている。 中世のペスト医師とかベネチアン・マスク(仮面)とか、妖艶にして華麗だけど不気味な味わいが上手く活きて

          映画レビュー(188)「べネシアフレニア」

          映画レビュー(187)「ボルテスⅤ レガシー」

          内容に関しては特筆するものはない。子供向けの勧善懲悪と母子の愛情ストーリー。だが、子供向けだからと言って決して子供だましではないところが素晴らしい。 元々は1977年の日本のアニメシリーズ(日本サンライズ)である。それがフィリピンでは1978年からオンエアされて、58%という視聴率を記録している。 当時はマルコス大統領の独裁政権下で、物語で描かれるボアザン帝国の専制政治とマルコス政権をなぞらえて、国民の心に沁みたのであろう。 1986年、エドゥサ革命(ピープルパワー革命)で、

          映画レビュー(187)「ボルテスⅤ レガシー」

          映画レビュー(186)「ミドリムシの姫」

          駐車監視員はその制服の色にちなんでミドリムシと呼ばれて、ドライバーからは忌み嫌われる存在である。 主人公の野上幸子は、ある過去を抱えてこの仕事についている。プライド高くこの仕事に就いている元教員の知念道夫とバディを組むうちに幸子も仕事にやりがいを持ち始める。 やがて、迷惑系Youtuberのサウザとウルフが、ビューを稼ぐためにミドリムシ狩りを始める。彼らの運命は? よく練られた脚本で最後まで引っ張られた。仕事に賭けるプロの意地や、過去と向き合う勇気を獲得していく幸子の姿に思わ

          映画レビュー(186)「ミドリムシの姫」

          映画レビュー(185)「侍タイムスリッパー」

          10月3日に観てたけど、まだ書いてなかった(汗) 過去記事でも触れた「拳銃と目玉焼き」の安田淳一監督作品。完成度の高さに皆驚く。これがインディーズ? と。 物語の内容はもうみなさんご存知だろうから書かないけど、主人公が現代にタイムスリップしてきた後、現代に順応していく過程がスピーディで感心した。凡庸な作品だと、これに手間取ってだらだらしたエピソードを連ねてスピード感を殺してしまうからだ。そんなパートは過去の作品ではメインになるだろうが、2024年の現代ではタイムスリップ物のお

          映画レビュー(185)「侍タイムスリッパー」