映画レビュー(62)「ミッドサマー」(2019年)
「村」系ホラーの佳作
アメリカの大学生グループが、留学生の故郷のスウェーデンの村に招かれる。夏至祭りである。メンタルを病み気味の主人公ダニーは、文化人類学を専攻する恋人に誘われて、この旅に参加するが、その村で行われる祭りは人身御供に通じるものだった。
物語は主人公の心の軌跡を追う
自分から心の離れている恋人、過去の悲しみなどのトラウマが折に触れ現れる主人公。村の奇怪な祭りや事件は、すべてその心が見せているようにも見える演出が深い。心が見せるバイアスのかかった光景である。
村に入る直前のドラッグでトリップするシーン。主人公の目線で視界がゆっくりと三百六十度回転する。これが、これ以降の映像は主人公の心象風景であるという宣言かもしれないと感じた。なぜならラストシーンでパニック障害的な強迫を受けた主人公とシンクロするように村人全員が同じ症状を示すからだ。
心の闇と連動するホラー
この手のホラーは傑作が多い。怪現象を描くシャーリー・ジャクソンの「山荘綺談」が主人公の心が見せる闇こそが恐ろしいように、S・キングの「シャイニング」で、本当に怖いのは怪現象ではなく歪んでしまった父親であるように。
ホラーとは、人間の心を描く作品なのである。
「ミッドサマー」
(追記)
北欧の民俗が実に魅力的で、私の脳内の稗田礼次郎先生と宗像伝奇教授も満足してた。
欲を言えば、日本語タイトルは「ミッドサマー」ではなく「夏至祀り(げしまつり)」にして欲しかったな。
この映画で思い出したのがイギリス映画の「ウィッカーマン」(1972) こちらはスコットランドのハイランド地方に残るケルト系の民俗が出てくる。物語構造はほぼ同じながらも、狙いは別物で、近々レビュー書いてみようかなと思いたった。プライムビデオで観られたはず。
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