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北海道で出会った「森の幼稚園」の魅力
北海道の研修会で講演をさせていただくために訪れたこの機会に、「森の幼稚園」を視察する機会をいただき、貴重な体験をしました。
自然との関わり方や保育の可能性を見つめ直す良い機会となり、その魅力を今日は書いてみたいと思います。
森の幼稚園とは
せっかく伺うので、すこし森の幼稚園について調べてみました。
森の幼稚園は、ドイツで1950年代に始まった教育法で、自然そのものを教室とするユニークな保育スタイルです。天候に関係なく、森や野外で過ごすことを基本とし、子どもたちが自然と触れ合いながら主体的に活動することを大切にしています。
この教育の特徴は、特定の教具や教材に依存せず、自然環境そのものを教材として活用する点にあるようです。
木の枝や葉、石、泥など、身の回りの自然物を使いながら遊びを展開し、そこから学びを得ます。
遊びを通じて身体を動かし感覚を磨き、創造性や問題解決力を育てるこ戸を大切にしているようです。
また、保育者は子どもたちの活動を見守り、必要に応じてサポートする役割を担います。
指示を与えるのではなく、子どもが主体的に行動できるよう支えることが求められるため、保育者には深い観察力と適切なアドバイス力が必要とされますが、とてもやりがいのある保育の一つだとおもいます。
森の幼稚園の理念は、自然環境を通じて子どもたちの五感や主体性を育むことにあり、その実践は遊びを中心にした教育の可能性の一つと言えます。
このスタイルは、特に豊かな自然環境を持つ地域で高い評価を受けていて、長野などで活発なようです。
今回視察させていただいた園では、本場ドイツを視察したうえで保育が組み立てられていて、とても素敵でした。
向山も自然があるので、学ぶべきところがたくさんありそうだなととても楽しみにしていました。
北海道の森の幼稚園での視察
今回訪れた森の幼稚園では、年少から年中に上がる際に「森のクラス」か通常のクラスを選べるというユニークなシステムを採用していました。
森のクラスでは、子どもたちは毎日森へ出かけ、自然の中で過ごします。私が到着した日は、スキーウェアを着た子どもたちが保育者と共に森へと歩いていく場面に出会いました。
森の中では、広場に常設されたテントがあり、そこを拠点に活動を始めます。
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雪深い環境の中、子どもたちはツララを取るために崖を登ったり、動物の足跡を追いかけたりして遊びに熱中していました。
保育者は滑りやすい崖を安全に登るための手助けをしつつ、子どもたちの冒険心を引き出すよう、不要な声掛けはせず、こどもたちを信じている様子が印象的でした。
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その後、広場での集まりでは、子どもたちが時事ニュースについて考える時間がありました。
お米の備蓄に関する話題を通じて、身近な生活と社会のつながりを感じさせる工夫がされていました。
自然での自由な遊びだけでなく、こうした教育的な意図が随所に込められている点が驚きでした。
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自然の中での探究と学び
森の幼稚園での保育を見て特に感銘を受けたのは、子どもたちの探究心が自然な形で引き出されている点です。
雪の下を流れる川を発見した際には、子どもたちがその存在を確かめようと試行錯誤し、保育者が適切な助言をすることで一歩進むことができ、探究が深まりました。
こうした体験を通じて、五感や創造力だけでなく、友達との協力や対話が育まれる様子が伝わってきました。
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森にはすべてがあるんですね。
森の保育と向山こども園の視点
森の幼稚園で行われる保育は、自然環境が整っているからこそ実現できる面が多いと感じます。
東京ドームがすっぽりはいるくらいの敷地面積を持つ広大な森や、そこに生息する多様な動植物は、まさに特別な教育環境です。
一方で、自然と子どもたちをつなげる工夫や、主体性を引き出す保育者の役割や、援助したり引いたりする専門性は、どんな環境でも応用できる部分があると考えます。
向山こども園では、ここまでの自然環境はないのですが、もう少しコンパクトな自然と、教材や教具、室内環境を活用しながら、子どもたちの対話や協働を大切にする保育を行っています。
異なる環境ではありますが、自然と子どもの関わり方や主体性を育む視点には、共通する価値があると感じました。
北海道の森の幼稚園での経験は、自然の中で学ぶ保育の可能性を考える貴重な機会となりました。
環境が異なるからこそ、自分の園でどのように自然との関わりを取り入れられるか、改めて模索したいと思います。
森の幼稚園の理念や実践を、自分の保育にも活かし、子どもたちの成長を支える新たな方法を探っていきたいと思います。