あるく
コロナで外出自粛になった3月最後の週から毎朝娘と二人で歩いている。毎日最低2マイル。約1時間。
娘は高校最後の3か月を失い、私は仕事を失った。
歩き始め時は、桜の盛り。楽しみにしていた日本人学校の卒業式が中止になって残念。家の前の満開のプラムの木の下で小学校、中学校、も仲良しさんと写真撮ったのにねー。ママの仕事はいつまでお休みなんだろう…ちょっと憂鬱で心配な日々。
我が家の近くに高架線が通っていて、その下が遊歩道になっている。遊歩道を二人でぶらぶらあるく。どんどん歩いて行くと知らない別れ道が出てくる。その度に二人でどっちに行く?と相談して、適当に曲ってゆく。突然、ビックリする程のお屋敷街に入ったり、小川沿いの道に出たり。満開の藤棚や、名も知らない白い花を付けている木が続く山道に出会ったこともある。広い芝生の中に遊具のある公園で野ウサギを見た。コンコンと響く音を辿って見上げたら、赤い頭のキツツキが熱心にエサ探し。小さな池にはカモがコガモを連れてゆったり泳ぎ、その池の横をバンビのように小鹿が走って行った。
先月、私の仕事が再開。娘も大学が決まり、アルバイトを始めた。
また、日常に戻った私達。少しずつ戻って来る慌ただしい日常。
お互いの仕事のシフトの擦り合わせ、大学の諸手続き、次々に入って来るEメールやテキスト。バタバタと音を立てて行く忙しい日々。
でも、前と違うのは、毎日あるくということ。
自分の目の前にある自然のなんと素晴らしい事か。ゆっくり流れる時間の中で大切な人と交わす会話がなんと心地よいことか。
ちょっと前の日常を取り戻し、新たな日常も手放さない。
そう。私達は強欲な母と娘なのだ。
来月にはご近所の庭からはみ出しているイチジクを一つご馳走になろうと企んでいる。