マガジンのカバー画像

詩集

41
運営しているクリエイター

記事一覧

燃える涙

まだ深夜の温もりがある場所で 涙がこぼれるのを見た 焦がれていた感情は いつの間にか すが…

私が包まれているとき 蠢き蠕く感覚に苛まれる 舌先の腫物のような 痛みはないのに 不快なは…

光を背負う人

真っ赤な指先 白い吐息 目深に覆う頭巾 水滴だらけの眼鏡の奥 燃え残りの炭のように 瞼を閉じ…

この心が叫ぶから

ふと思い出した歌詞の一節に 無性に泣きたくなったところ きゅっと唇を甘噛して耐えていた 風…

切なさは夜に溶ける

思うように体を動かすことができない 呼吸すら危うい意識の中 薄くかかるモヤの向こう 何かの…

爪切り

素足の形が好きだと 壊れ物のように持つ その手が好き アキレス腱と踵を支えて つま先を真正…

あいのありか

存在するのに 誰も在処を知らない 例えばあなたの指先が触れる場所に 私への愛があるのなら ジクジクと腫れ上がるこの種の先が 今にも泣き出してしまいそうであっても 安心して委ねても良いのかしら 私の内側に咲く花に 熱くキスをしてくれるなら あなたを疑わずに愛の概念を構築させて 白昼夢を揺蕩う海月のままでいたい 熟れる果実を啄む人 どうか教えて あなたの「あいのありか」が喜ぶこと パズルの欠片のように私を愛するから とうとうあなた無しでは生きられなくなった この身も心も

バーテンダーと詩

たくさんある 言葉の中から ひとつ ひとつ 丁寧に 慎重に 大胆に 脳内で選ぶ様と 壁一面に並…

欲しい人

あれが欲しい これが欲しい 何も要らない 何が欲しい? 私は何かが欲しかったような気がす…

束縛と憐れみ

憐れみで生き、緊張で縛ることを「愛」だと思っている人 きっと君は気づかない 自分の幼稚さ…

雨雲と嗅覚

向こう側の気持ちを見せてよ 私にはわからない合言葉の向こう 初夏の雨粒が少しだけ甘いのは …

静けさの感覚

凪いだ風に包まれる水面 日向で眠る小さい生き物 それらを見つめているような 心のあり方 眠…

通り雨

煙る湿気を川と共に流れながら 寝静まっている歓楽街を歩けば 静けさの中から目覚めだす太陽の…

無題

明け方 星もない夜空から群青の波が引く 全てをさらけ出すには まだ早い 真白の鱗の隙間から差す青い光 夏の名残を焼き尽くすのは 懐かしき異国 吹く風も 肌を包む温度も 土の感触ですら 柔らかい 不意に 潮風とカモメが父を乗せた漁船とともに 太陽の昇る方へ向かう姿が脳裏を過ぎる 郷愁か暗示か 今はまだ