通り雨
煙る湿気を川と共に流れながら
寝静まっている歓楽街を歩けば
静けさの中から目覚めだす太陽の時間
枝垂れ柳が風の方向を示す
トンボ達が我が家を案内したがる
昔の杵柄か
私も歩けば酒場に当たる
名ばかりのバーテンだけど
店を眺めるのが楽しくて
喫茶店を探しながら
行き着く先は洒落た酒場で
我ながら師匠譲りの鼻の効き方に
ニヤケた口元を慌ててマスクで隠す
足を踏み入れたのは私の方
この酒が最初の一杯
あの酒が最後の一杯
気がついたらそんな場所にいた
通り雨は
故郷で私を冷やすだろう
それでもどこかで
その冷えた空気を恋しがっている
夏でもこんなに焼けないのに
アスファルトに霜がつくのも
時間の問題ね
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?