詩「つねに戦前(2)」
戦前を生きる子どもたちへⅡ
声をあげるということは
いつの時代もむずかしい
早過ぎれば杞憂だと一笑に付され
早ければ現実を知らぬ夢想家だと批判され
遅ければ空気を乱す者として叩かれ
遅過ぎれば国賊として捕らえられる
しかし君たちには
どんな時にも声をあげる権利がある
いまの状況をまねいたのは君たちではなく
にもかかわらず
その影響をもっとも強く受けるのは
君たちだからだ
おそらく私のことばは
君たちには届くまい
私のことばは
夢に疾走している君たちには石ころだ
青春を謳歌する君たちにはノイズだ
孤独と絶望の最中にいる君たちには塵だ
それでも私は書く
私は十年前にこの詩を書いた
書いたもののこの詩は
子どもたちどころかほとんどの人に届かなかった
だが十年後に一人の人間の許に届いた
他ならぬ作者である私自身に
この十年を振り返るとき
戦前という時代のむずかしさを思う
いや、そうではないのかも知れない
世界のどこかで戦争がある限り
戦後でも戦前でもなくこの国も
戦中にあると思うべきなのかも知れない
だから私は書く
今度もまた君たちには
届かないかも知れないが
それどころかまた
十年先の私だけにしか
届かないかも知れないが
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?