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詩「哀(かな)し・愛(かな)し」

かなしき寝息

高さ十五センチの低床ベッドに
母は眠る
夜ごと訪れる痛み
痛いよ 痛いよ かなしいよ
鎮痛剤も
気休めにしかならず
ただ腕や足を
摩ってやることしかできない

摩っているうちに
逆に僕の手を摩りはじめ
私やこんなになってしもて
おとちゃんに何もしてやれやん
かなしいよ……
そんなことない
おかちゃんがおってくれるだけで
うれしいで

僕は死んだ父になって
母に語りかける

古語の「かなし」には
「いとしい」の意味があるという

春のあけぼの
かなしき母が
寝息をたてはじめ
いとしき母となる

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