短歌「うし」
痛きところは腕か足かと尋ぬれば「うし」とぞ母は答へけるなり
これには笑った。端的にして的確。まったく母は天才である。まあ、言い間違えなのだが、だからこそ考えてこんなことばは出ない。話し言葉はシチュエーションと共にある。「あ」や「う」や沈黙のほうが意味や気持ちを伝えうることもある。腕も足も痛い。充分に伝わりましたよ。お母さん……。母が痛みを訴えるのは、たいてい未明から明け方にかけて。こちらが寝入るタイミングによっては、もう勘弁してくれ、という日もあるが、この日はこの一言で楽しくマッサージが出来た。
ただ、ことばでは腕と足を一語に出来ても、身体の手足を一つには出来ないから、腕と足、順番に摩るしかない。先に腕をさすります。足のほうは待ってくださいね、お母さん。
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