俳句「当り前が当り前でなくなって」
昼寝覚父をるべしに呼べる母
母の傍にはいつも父がいた。亡くなる2,3年前の父は、日の沈む前から缶ビールなどを飲むことが多かった。会話の成り立たない母の傍らにいて間が持たなかったのだろう。かと言って、傍を離れるわけにはいかないから、酒でも飲むよりほかやることがなかったのだと思う。
父が亡くなって、1,2年は、昼寝をしていて目覚めた母が、大きな声で父を呼ぶことが何度もあった。当り前のようにいた人の不在。母が父を呼ぶたびに、そのことを実感させられるのがつらかった。
いまは大声で父を呼ぶようなことはなくなった。もしかしたら仏になって、また母の傍にいてくれているのだろうか。