短歌「姉弟でちがう母への印象」
読みかけのカラマーゾフの兄弟を開いては閉づ母の呼ぶたび
姉弟で介護をしていても、わが家に通ってくる姉と母と一緒に住んでいる私では母への印象がずいぶん違う。接する時間の短い姉のほうがむしろ母の変化に敏感だ。亡くなるまでのここ2年余り、母は笑うことがほとんどなくなったと姉は言う。ところが、私は毎朝起きたときに見せる母の笑顔を見ているから、あまりその印象がない。
しかし、3年前の秋に詠んだこの歌を見ると、母は喜怒哀楽を表わすことが少なくなってきていたのかも知れない。よく考えると、母が亡くなるまでのこの1年、母の言動に一喜一憂することは少なくなっていたように思う。それだけ感情を表に出すことも少なくって、姉の言うように表情も乏しくなっていたのだろう。