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サービス提供者におすすめの強みや特徴の伝え方
企業や商品の独自性をどう伝え、他社と差別化し、顧客に利用してもらうかは、企業活動を続ける限り、常に課題であり続ける。
この記事での「伝わった」の定義は、「伝えたい内容を相手が理解し、納得し、実際に行動を起こした状態」を指していますが、これを実現することは言うほど簡単ではなく、さらに、「自社の商品の"独自性"が伝わり差別化できた」という状況を作るには、さらなる専門的知識が求められる。
僕自身、これまで「伝わらない」という壁に何度も直面してきた。しかし、その都度、なぜ伝わらないのかを考え、仮説を立て、改善行動を実行してきた。今回はその経験から得た教訓を簡単にまとめていこうと思う。
ちなみに「伝える」をそのままテーマにしてしまうと、かなり幅広くなるのでこの記事では「強みをどう伝えるか?」という問いに焦点を当てて書いていきます。実際のブランディングプロジェクトでもクライアントと頻繁に議論する内容でもある。
まず、要素を分解する
強みを伝えるにあたって、まず何が強みであるかを明確にする必要がある。その上で、三つの切り口から要素を分解する。
ファクト(事実)
メリット(ファクトから導かれる利点や長所)
ベネフィット(ファクトやメリットから得られる便益、恩恵)
例えば、乳酸菌シロタ株を史上最高の2,000億個含む飲料(以下A商品)があるとする。(そんな商品ないですが)
ファクト:乳酸菌シロタ株を2,000億個含む飲料である。
メリット:睡眠の質が向上し、熟眠時間が増加するという報告がある。
ベネフィット:毎日、仕事の目標に向かって「よし!やるぞ!」という前向きな気持ちになれる。
このように、一つの際立ったファクトを基にメリットやベネフィットを整理していくと、伝えるべき内容も自然と整理される。
伝える相手やシーンに応じて伝えるべき内容の優先順位を変える
上記で整理した内容はあくまで骨組みであり、誰に対しても同じ順序で伝えてもなかなか相手には響きません。例えば、睡眠に不安を抱えており、既にA商品を知っていて成分について詳しく知りたい人には、「1.ファクト」から順に伝える方が効果的である。一方で、もし先ほどの「3」から伝えると「それはもうわかっている。頼むから早く成分のことを教えてくれ〜(泣)」となってしまう。
しかし、多くの場合はそこまで関心が強い人は稀なので、ということは伝える順序や伝え方を変える必要があるんです。
例えば、「最近疲れ気味で、毎日エナジードリンクに頼っているが、カフェインの摂取が健康に影響しないか心配だ。身体に負担をかけずにエナジードリンクの代わりになる商品が欲しい」というニーズを持つ人がいるとする。このような人に対しては、「1」をダイレクトに伝えてもまず振り向かない。「乳酸菌シロタ株を2,000億個?一体なんのことですか?」となるから。
そのため、上記のニーズを抱えた人に対しては、逆から、「3.2.1」の順序で伝えてみたり、「3>2>1」の優先順位で伝えるべき内容の強弱を設計する。「3.ベネフィット」を主なメッセージとし、その後にメリットやファクトを補足するイメージ。つまり、伝える内容の優先順位や順序を、相手のニーズや状況に応じて柔軟に変えることが重要である。
ベネフィットの内容は柔軟に変える
ベネフィットの内容自体も、相手に応じて柔軟に変えていく必要がある。睡眠の質を改善したい理由は人それぞれであり、仕事でパフォーマンスを発揮したい人もいれば、休日に子供と思い切り遊びたい人もいる。そのため、ターゲット別にベネフィットを整理し、それぞれに最適なメッセージを届けることが求められるのです。ベネフィットに共感し、「そうそう!それが欲しかったんだ!」と思ってもらえれば、強みや独自性が伝わった状態と言えます。
ベネフィットを伝える際の注意点
価値には大きく分けて「機能的価値」と「情緒的価値」がある。
・機能的価値→性能やスペック面の価値
・情緒的価値→感覚的・精神的な価値
ベネフィットは情緒的価値に近い(イコールではない)が、これをそのままストレートに伝えても響きにくい場合が多い。むしろ、胡散臭く聞こえてしまい、顧客が離れていくこともある。これを解決する方法が「ストーリー」を活用すること。単に情報を届けるのではなく、物語で届けることで情緒的価値が伝わりやすくなる。
ストーリーは、直感的に内容が伝わりやすく、記憶にも残りやすい性質がある。わかりやすい物語を語ったり、テキストと写真を組み合わせたデザインや、動画コンテンツを活用することで、情景を想起させ、感情移入を促すことができる。
だから強みや特徴といった独自の価値を伝える際には、いきなり「気分が晴れやかになり、日々幸福感を実感できますよ」といった情緒的価値のみを直接的に発信するのではなく、ストーリーやデザインを通じて"価値を感じさせる工夫"が必要である。ただストーリーを組み立てるにも多くのスキルを要するのと、一歩間違えると、こそばゆいポエムのようになっていることもあるため注意が必要。
まとめ
この記事で紹介した内容はあくまでも一つのフレームです。他にも特徴や強みを効果的に伝える方法はいくつも存在すると思います。ただ、確実に言えるのは、顧客は物自体にお金を払っているのではなく、その物が果たす役割や、もたらされる「意味」にお金を払っているということ。
そのため、単にスペックや特徴を伝えるだけでなく、ストーリーやデザインを上手に活用して、その価値を効果的に伝えた企業が選ばれるようになります。今に始まった事ではないですが、モノやサービスが溢れる現代においてこの流れはより加速していくはずです。