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本の備忘録

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16年前くらいから、読んだ本の備忘録として、それから未読の積読本も相当溜まっていたので重複して購入しないようにと、書評というには拙い内容をとつとつとブログで綴っていました。 6…
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本のことをとつとつと

16年前くらいから読んだ本の備忘録として、それから未読の積読本も相当溜まっていたので重複して購入しないようにと、書評というには拙い内容をとつとつとブログで綴っていました。 6年ほど続けたものの、忙しくなって中座して今に至りますが、今回会社で綴っているコラムをアップし始めましたので、並行して過去の備忘録をこちらにもアップしてみようと思い立ちました。 一番新しくても6年前の本にはなりますが、いいお話は時代を越えますので何かの参考になればと思います。

本好きになったきっかけ

既にどこかで書いた気もしますが、あらためて綴っておこうかと思います。 自他ともに認める本好きなのですが、なぜだか最近なかなか本が読めていません。 ネットニュースやブログやら、どうでもいいツイートなどは空気を吸うが如く自然に読み進めているのに、いざ本を手に取ろうという気持ちになかなかなれないというのが正直なところでしょうか。 読みたくてしょうがない、愛読書シリーズの新刊なんかが出ると、途端に読みたいスイッチが入るのですが、読み終わってしまうと、何やらまたオフモードに入って

娯楽小説の愉しみがギッシリ

久々の本の紹介です。 圧倒的娯楽チャンバラ小説の三部作。 この辺りのキーワードに興味をそそられる人は、ハマる人かと。 重厚な長編小説や、人情物の書き下ろしシリーズなども手がける直木賞作家が、エンターテイメントに振り切って描いた本作。 全三部作のうち第二部まで刊行され、未完の状態でコミカライズも同時進行中。 時は明治維新。まだ世には終焉を迎えつつある武士たちが燻っている頃。 ある日全国に聞いたことのない新聞が配布され、そこには「大金を掴みたく腕に覚えのあるものは集ま

12月の風物詩

本好き人間としては、実はこの12月というのはとても喜ばしい月でして、おそらくは年末年始の空き時間の読者層を見込んで、各社が今年の年間ベスト本の特集を組む月でもあるのですよね。 週刊誌であれば、文春は国内と海外のベストミステリー本の特集を組みますし、ダ・ヴィンチも年間ベストランキングが目玉となっています。 あとは宝島社から恒例の「このミステリーがすごい!」のムック本も刊行されます。 私が毎年必ず購入するのは、このコロナ禍中で惜しくも亡くなられた大好きだった書評家の北上次郎

水戸黄門化しても面白いもの

久々の読書の投稿となります。 IWGP この文字の並びを見てピンときた方は、プロレスファンか私の好きなシリーズのファンですよね。 毎年、9月中旬頃に最新刊が発売されるのを楽しみにしています。 ずっと読んできた大好きな現代ものの連作短編シリーズはと言えば、この「池袋ウエストゲートパーク」か「東京バンドワゴン」になります。 池袋駅西口公園の片隅で八百屋を営みながら、様々なトラブルに巻き込まれながら無償で問題解決をしていくトラブルシューターの物語。 文才のある主人公が、

現実を受け止め、逞しく生きる人々

飛行機の移動前、まだまだ読める本は電子書籍がタブレット内にも沢山あるのに、どうしても空港内の本屋に立ち寄ってしまいます。 気になる作家の文庫化最新作を手に取って、後ろの解説を見てみると最近亡くなった信頼していた書評家が本来受け持つはずだった本書を、その書評家にずっと後押しされてきた作家が代打で推薦文を書いていました。 思えば、本書の作家を好きになったのももともとはこの書評家のレビューがあったからでした。 結局、そのまま購入してしまい機内へ。 作家ありきで購入したので、

いつまでも消えない本への渇望

思春期の頃からの習慣について触れることになりますので、話すのが恥ずかしいのですが、本の収集癖がついてしまったきっかけというか原点について。 中学2年生の途中から父親の仕事で渡米することとなったのですが、当時住んだのはアメリカ南部のど田舎。 裏庭には鹿が出て、近くのスーパーに行くのにも車で数十分かかるような環境でした。 当時はインターネットも何もないですから、入ってくる日本の情報はというと、日本の友人からの手紙くらい。 アメリカでの学校生活には初めから馴染めずに、現実逃

「関係性のケア」を重視する

久しぶりに読み返しての備忘録となります。 「ケアをする人」の定義 健康に問題のある人に対して回復を目指し、 それができなければ現在の機能を保ち、 いずれもできないときには最後まで寄り添うことをする人 諦めないのはケアではなく、「関係性」 関係性をあきらめた結果が不適切なケアとなる(拘束) 大事だと思っていることとやっていることが一致しないから、ケアをする側が燃え尽きる 不適切ケア(強制ケア) = パターナリズム 私たちケアをする側は「どうすればいいか」答えを

平和を求めて歴史に抗った好漢の物語

織田信長が好んで唄ったとされる幸若舞の演目のひとつである「敦盛」。 その中に、「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり」というくだりがあります。 ここでいう「人間」は、「にんげん」と詠むのではなく、「人の世」を意味する「じんかん」と詠みます。 つまり、「人の世の五十年は、下天と比べればただの一日でしかなく、はかないものだ」という意味になります。 そして、今回紹介する一冊は、この「人の世」を何とかせんとして最期まで奮闘した武将の生き様のお話です。 主人公は、

隙間を埋めてくれる素晴らしい物語

「ビッグロックの法則」というものがあります。 要約すると下記のような話になります。 大事なことは先に。 本当に自分にとって大切なことは何かと、若いうちから考えて欲しいという教師からのメッセージがこの法則です。 ところで全然関係ないのですが、最近ある小説を読みました。 大好きな漫画「BLUE GIANT」のスピンオフ小説であり、メインキャラクターのピアニストを主役に据えた物語。 これまでのメインストーリーを脇役の視点から描いていきます。 そして、実は映画化された物

予言の書と言われる一冊

知り合いが読んでいたのを見て、そういや、結構昔に電子書籍のセールで買ったまま放置していたなと思い出して読み始めた一冊。 ちょうどここ最近は出張続きでしたので、行きの飛行機の中でサクッと読めました。 今のコロナ禍の時代であれば、こういった題材の小説は描きやすいかもしれませんが、どんなに希望に満ちたエンディングにしても現実と比較してしまうとそれほどの爽快感は得られない気がします。 本書の凄いところは、まるで今の世の中が来ることが分かっていたかのようなタイミングで出版されたこ

馬主とその家族の20年を描く圧巻のエンターテインメント!

以前のコラムでも書きましたが、好きな本と出会いたければ、参考基準として持っておくといいのが好きな文学賞と好きな書評家。 この本は一番好きな賞である山本周五郎賞の受賞作であり、一番好きな書評家であった(残念ながら今年亡くなられてしまいました)北上次郎氏が推薦する一冊であり、見過ごすわけにはいきませんでした。 福岡に戻る飛行機の中で、時間を忘れて一気読みしたエンターテイメント長編。 タイトルからは、何だか皇室的な響きがありますがそんなお上品なお話ではありません。 競走馬の

ど直球のラブストーリー

ど直球のラブストーリー。 自己表現の不得意な彼氏に、自分に自信が持てない主人公。 二人が織りなす圧倒的にピュアな恋愛模様が、心臓のど真ん中を貫いていきます。 ちょっと乱暴な岐阜の方言が、かえって彼氏の優しさを際立たせてくれます。 心の荒んでいる人には、是非ご一読いただきたいです。 久々に誰かに教えたくなる漫画でした。 11月からドラマ化もするみたいですけれども、観たいような観たくないような。 今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

逞しい少女たちの物語

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で大好きになったノンフィクション作家による最新小説。 切り口はこれまでどおりシニカルな子供目線。 今回の主人公は女の子。 イギリスの低所得者層としてアル中の母親とひ弱な弟を支えながら、今を必死に日々を生きるその姿勢と語り口は、これまで以上に切れ味鋭くイギリス社会の貧富の差と現実を鮮明に描き出します。 同時に、この物語には裏の主人公がいます。 女の子が現実逃避をするために没頭する本というのが、日本の大正時代のアナキストである