ただの至極な日常を
餃子を包んで、夜中まで一緒にゲームをして、
お布団の中で、互いの好きなところを言い合って。
目を見て、手を繋いで、好きだよと直接言い合えるこの尊い距離を、私は、もっともっと大切に、噛み締めて過ごさなければいけないのだ。
❄︎ ❄︎ ❄︎
「東京の生活が今より楽しくなられたら困る」
夜中、狭いワンルームの片隅で、君が呟く。
春から東京へ行くことを決めた私と、変わらずに
大阪で夢を追いかけ続ける君。
自分から離れるくせに、泣いてばかりの私と、
「気が済むまで東京で頑張っておいで」なんて、
優しく何度も背中を押してくれる君。
いつも肯定的な言葉ばかりくれるもんだから、
私ばっかり寂しいの?って、不安じゃないの?って
傲慢な私は、勝手に余計に寂しくなっていた。
だからこうして、私の新生活の幸せを、少しも願っていないことが、逆に人間らしくて可愛いなって。
今まであまりにもピースフルだった私達の恋愛。
敵もいないし、壁もないし、ただ幸せな楽園生活。
「遠距離くらい乗り越えられないと、この先何もやっていけないわよ」
大好きな編み物教室の先生がピシャリと強い言葉で、私の心の手綱を、そっと編み直してくれる。
その通りだ。
2人で乗り越えなければいけない初めての課題。
作戦と武器を用意して、何度も何度も挑み続けるしかないのだ。
「まぁ、壁と思うかチャンスと思うかは、人それぞれですけどな」
まったくこの人は、本当に。
壁を壁とも思わず、どうやって楽しんで歩こうか、
そればかりを考えていて。
この山を超えた先にある2人の尊い未来を見据えて、一歩ずつ、自分のペースで歩んでいこうとする。
心配性すぎる私は、こういう君の楽観的な性格に、
何度も何度も救われていくんだろう。
今この手の中にある幸せを、もっと強く握りしめて
残された時間の許す限り、この楽園を少しでも、
朗らかに過ごしていこう。
今日の思い出があれば、離れていても、きっと、
ちゃんとうまくやっていけるはずだから。
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