指輪なんかよりも
「鍵、もうそれは婚約と同義だよね」
おふとんの中で、恋人がむにゃむにゃ呟く。
良かった。君が私と同じ思考回路で。
そもそも、婚約指輪って何なのよ?って思う。
男の人が、女の人にパカってあけるアレ。
韓ドラで観たら胸キュン案件なのに、現実だと、一気に違和感が溢れ出してくるのは私だけ?
私だって、等しく君を愛してるんだかから、
パカってやる権利、あるはずだよね?
パカした後日、女の人は何か渡したりするの?
そして結婚指輪も用意するの?多すぎない?
指輪ばっかり要らないよ。金属の無駄遣いだ。
装飾品なんかより、毎日必ず使う鍵が欲しい。
私達は、2人とも一人暮らしなのだけれど、合鍵を交換をしていない。
ふんわり話に上がることもあったけれど、恋人は頑なに首を縦に振らない。
君のいる家に意味があるのであって、君のいない空間には何の価値もありませんよ。
だから、勝手に家に上がるなんて有り得ないよ。
駅近や、広さなんかより「私がいる家」にしか、興味のない所、君らしくて本当に大好きだよ。
大切な君と暮らす家に入れる特別な鍵。
私達以外絶対に入れない、入る隙を与えない鍵。
愛の巣を、嫋やかに紡いでいくために必要な鍵。
いつか、おはよう、おやすみ、行ってきますってお揃いの鍵をぶら下げた玄関に住めますように。
今の私の、密かな夢なんだよ。