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「つるの恩返し」をSDGsでブランディングしてみた。〜倫理観がもたらした、サステナビリティ・ブランド〜

はじめまして。もしくはお久しぶりです。博報堂ブランド・イノベーションデザイン局(以下BID)のブランディングディレクター高嶋紀男です。

今回は『「かさじぞう」でブランディングしてみた。』に続くシリーズ第二弾です。

このシリーズの趣旨は下記のとおりです。

私は、たまに学生さんとお話をする機会があるのですが、いつもブランディングについて伝えるのは難しいなあと感じます。
わかりやすく伝えるには例え話だろうと思い、昔話でブランディングを語るというアイデアを思いつきました。
昔話では、正直で働き者だが清貧な主人公が、超常現象によって報われるというストーリーがとても多いように思います。
しかし、現実はそうはいきません。正直で働き者であれば必ず超常現象が起こるわけではないのですから。
超常現象に頼らず、企業や事業主が世の中に認められるために行う活動が、いわゆるブランディングと呼ばれるものだと私は考えます。
この連載では、筆者が所属するブランディングの専門部署BIDの各分野のスペシャリストをゲストに迎え、ゲストと筆者が、「ブランディングを昔話に当てはめてみたらどうなるか」というテーマで話し合いながら、昔話をリライトします。

『「かさじぞう」でブランディングしてみた。』より

第二回のゲストはイノベーションプラニングディレクター で弊社SDGsプロジェクトメンバーの小林舞さん。

SDGsの視点で「つるの恩返し」についてのブランディングのアイデアをいただきながら、「ブランディングつるの恩返し」を創作してみました。

さて、どんな「つるの恩返し」になったでしょう?


小林舞 博報堂ブランド・イノベーションデザイン イノベーションプラニングディレクター /SDGsプロジェクトメンバー
サステナビリティ領域のコンサルティングが専門領域。

ブランディングつるの恩返し

むかしむかし、あるところに、まずしいおじいさんが住んでいました。
ある日、おじいさんは、町へたきぎを売りに出かけた帰り、湿地の近くの雪の中で、わなにかかったつるを見つけました。
「かわいそうに。たすけてやろう。これから、気をつけるんじゃよ。」
と、わなをほどくと、つるは、どこかへ飛んでいきました。

おじいさんは「ここらは、けもの用のわなが沢山しかけられているから心配だ。」と、つるが来ている冬の間、湿地のあたりを見回ることにしました。

毎年見回りをして、わなにかかったつるを助けているうちに、他のところに比べても、心なしかこの湿地の周りのつるが増えてきたようでした。


ある雪の晩、入口の戸をたたく音がしました。
おじいさんが扉をあけたところ、女の人がそこに立っていました。
「どうなされた?」おじいさんが尋ねると、
「ちょっとお話があるのですがよろしいでしょうか。このあたりはつるが多いですね。つるの羽を織り込んだ着物は『鶴氅(かくしょう)』といって・・」
「待て待て。玄関では寒いじゃろうから、いったん中に入りなされ」
おじいさんは言いました。


女性は囲炉裏の前に座ると、続きを話し始めました。
「失礼しました。つるの羽を織り込んだ着物は『鶴氅』といって、保温性が高く美しくて縁起もいいので、高く売れます。羽が獲れるここを拠点にしてそれを作りたいのですが、はた織り機をお持ちなら、場所を貸していただけませんか?お礼は売ったお金に応じてお支払いします。」

「それは良いが、決して生きたままむしり取ったり、殺して羽をとってはならん。あくまで拾った羽でつくるのじゃ。」

「・・・・・・・・わかりました。」

「その『・・・・・・・・』が怖いんじゃが。。拾うのはわしがやろう」

その日から、女性はおじいさんの家ではたを織ることになりました。

女性は部屋に入る前に言いました。
「はたをおっている間は、決して部屋をのぞかないでください。」

「なぜじゃ?」

「集中したいんで」

トントンカラリ、トンカラリ、トントンカラリ、トンカラリ
女性は部屋に閉じこもると機(はた)をおり始めました。

出来た織物はとても美しいものでした。
二人は、着る人やつるがいつまでも健康で幸せであるようにという願いを込めて、この織物に「千代鶴織物」という名前をつけました。

ブランドロゴ


おじいさんが町へ出かけ「この織物はつるの羽が入っていてあたたかい。つるを殺生せずに、自然に抜けた羽でつくっているので多くは作れないが縁起が良い」と言って売り歩くと、とても高く売れました。

その織物は評判を呼び、織っても織ってもすぐに売り切れ、羽が足りなくなってしまいました。

女性は言いました。
「やはり拾うだけでは。。。」

「いや、つるを大事にしているからこそ高く買ってくれるんじゃ。そこは絶対に変えてはならん。」

おじいさんは続けて言いました。
「とは言え、わし一人で羽を拾うのは大変じゃ。湿地の周りを村人から買い取って、かわりに羽を拾うために雇おう。そうすればわなをしかけられることもなく、つるがより過ごしやすい所をつくれるはずじゃ」

こうして買い取った土地に、永く続くようにという願いを込めて「千代鶴の里」と名付けました。

千代鶴の里のビジネスモデル

その里で出来た織物に「千代鶴の里」の印を付けることで、その印が出来栄えとつるを大切にしていることを表すようになり、ますます織物の売り上げは安定しました。

女性は言いました。
「おじいさんの言う通り、つるを大切にしてよかったです。」

「じゃろ?」

「・・おじいさん、今度織ってるところ見てみます?」

「ありがとう。実はずっと見てみたかったんじゃ。」

つるにとっても、お客さんにとっても、村人にとっても、おじいさんや女性にとっても良い仕組みができたことで、みんないつまで幸せにくらしたとさ。

おしまい。

振り返り

今回は原作と違う「つるを助けることを継続する」行動が起点でした。

生産の前に環境保全があり、それがあるからこそ生産も安定しました。

また、大量生産しないので値崩れも起こさず、

ストーリーを提示することで付加価値をつけてブランディングを行い、利益率も高くキープすることができました。

その余裕が環境保全と地域経済を両立させました。

これこそが「持続可能な」経済活動だと筆者は考えます。

博報堂は、このような経済と社会のダブルインパクトを目指す活動「博報堂SDGsプロジェクト」を推進しています。

また、生活者や社会とともに進めていく事業変革・事業成長のことを「ブランド・トランスフォーメーション(以下BX)」と定義しています。

ブランディングやBXに関して、もし少しでもご興味を持たれた方は下記リンクをのぞいていただければ幸いです。

BIDホームページ https://h-bid.jp/#top

BID Twitter https://twitter.com/hakuhodoBD

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