NO.2の育て方㉛ナンバー2は扇の要
組織がまとまるために必要なことは何でしょうか?
会社という場でメンバーが思い思いに仕事をしているだけではただの人の集まりです。
日々、業務をこなし売上が達成できたとしても、一体感もなく、組織としての本当の成長もなく、時間だけが無為に流れていくだけだと思います。
■組織が成り立つための3つの要素
アメリカの経営学者であるチェスター・バーナードが提唱した組織の3要素という考え方があります。ご存知の方も多いかもしれません。
1.共通の目的/組織を構成するメンバーが共通の目的を持つこと。
多くの場合は経営理念やビジョンを指しますが、ウチの会社が大事にしている価値観は何なのかが皆で共通認識となっていて、その価値観の実現のために具体的行動が取れていることです。
働く理由は人それぞれであっていいと思います。けれども、どうせ働くのであればベクトルが同じ方向に向いている仲間と仕事をしている方が精神衛生上も良いですし、何のために働くかという意味に気づいたり、考える機会にもなります。
理念や価値観というものも人によって受け止め方が異なるものです。多くの場合、人が働く理由は金銭を得るためというのがほとんです。
顧客満足を目指す、社会貢献をする、課題解決をする、自己成長するなど、理念やビジョン、価値観は会社ごとにそれぞれで良いのですが、同じ目的を持たずに同じ場所にいることは苦痛でしかありませんし、組織としての成果は出ません。
2.協働の意欲/組織を構成するメンバーが協力して、協働する意欲があること。
協働の意欲は組織に貢献する意欲とも言い換えられます。つまり、自分のためだけではなく組織、チーム、仲間に対してお互い助け合いながら成果を出すために努力することです。
与えられた業務を自己完結して淡々とこなすだけの日々という人も現実には多いと思います。
自分の仕事がどう発生し、自分のした仕事がその後組織の中でどう関わっていくかを知る機会もなく、点の作業を行っていると段取りや調整、気遣いなどの考えも浮かばず、ため込んだノウハウも誰ともシェアされることもありません。
一人は全体のために、全体は一人のためにという発想に至らなくなってしまうので、本人にとっても組織にとってもこうした働き方はお互いを苦しい状況に追い込みます。
3.コミュニケーション/組織のメンバー同士が円滑なコミュニケーションを取れること。
情報共有と意思疎通が適切に図られている状態を指します。組織が同じベクトルで動くために必要なコミュニケーションがあることは必須条件です。
組織としての目標が上から一方通行で流れてきても、それが何のためにやることなのか、どうやって成し遂げるのか、必要な情報が少なく、不明確なことばかりでは取組みようもありません。
そう、どんなに立派な理念を掲げようと、お互いさまの気持ちで動ける人材が多くても、コミュニケーションが適切に図られていなければ何の意味もなくなります。
・必要な情報が適切なタイミングで、わかりやすく、納得感のある内容で必要な人に届けられる。
・異なる意見を述べてもその結果不利益を被ることがない。
簡単に言うと、コミュニケーションの基本部分はこうした点ですが、疎かにされやすいのも現実です。
■誰がどのように伝えるのかが重要
さて、組織が成り立つための3つの要素を見てみましたが、どれかが欠けている、全てがない、会社ごとにさまざまと思います。けれども全く何もしていない会社もない訳です。問題は誰がどのように伝えているかです。
多くの場合、メッセージを伝えるのは社長でしょうが、こんな答えが返ってきそうです。
「経営理念くらいあるし、額に入れたり、WEBサイトやパンフレットにも書いてある」
「会議や朝礼などで再三話している」
「従業員同士、何か困ったら協力し合ってうまくやって欲しいとも話している」
「必要な情報は開示しているし、具体的指示も出している」
社長というのはずっと先のイメージが具体的になっているものですから、つい省略してしまいがいちです。
「最低限のことを伝えれば、あとは各人が考えたらわかることだろう」
悪気もなくこう考えているのです。そして、自分は繰り返し伝えているのにいつまで経っても従業員が理解しない、期待通りに動かないと感じているのです。
社長は忙しいものです。どのように伝えたら従業員に理解してもらえるのかをじっくり考えている時間はありません。また、自分が従業員の目線に下りることもできません。さらに言えば、現場の状況も従業員の性格なども正確に把握していません。
経営理念などの大きく、重く、抽象的になりがちなメッセージを適切な表現で伝え、理解してもらうにはどうするか、職場の環境や風土の改善をどうするか。
これができるのはナンバー2しかありません。
理由は、現場を知っている部課長レベルでも社長の意図や言いたいことの全体像が掴めず、具体的に表現できないからです。
職場の改善を図るのもなぜそれをしないといけないかがわかりませんし、取り組むことでどんな副作用が発生し、対処しないといけないかの想像ができません。職場を自分の見ている範囲の点で見ているからです。逆に言えば、会社を全体的な視野で見れないからこそ部課長なのです。
まして、従業員ひとり一人が自ら進んで理解、納得し、課題に向き合い、行動することは難しいです。
■ナンバー2が相応しい理由
ナンバー2が社長の考えや言葉をフォローする立場として相応しい理由はつぎのとおりです。
・社長の考えや意図が分かっている(社長の理解者である)
・皆にとって、どう伝えたら伝わるのかを分かっている(現場の理解者である)
・会社全体にとって必要なことだと理と情の両面から分かっている(マネジメント能力がある)
・行動レベルに落とし込むために具体的に何をどうしたらよいのか分かっている(構想力がある)
・うまくいかない時のことも想定している(リスク管理、レジリエンス)
以前にも、ナンバー2に必要な能力はヒューマンスキル(対人関係能力)と書きましたが、組織の上下を結び、潤滑油となる存在はナンバー2しかありません。つまり、扇の要なのです。
最後までお読みいただきありがとうございます。