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イギリス:スコットランドのビール

「最近ロンドンには小さなビールの醸造所があちこちにできているんだよ。新しいバーもどんどんオープンしている。」

数年前、ロンドン在住の友人がこう教えてくれた。


少しネットで探してみると、なるほど、ロンドンでは小規模なビールの醸造所が沢山できて、ホームページを持っているところも多くある。中にはビールとジンの醸造を行っている所もあり、他の醸造所と差別化を図っているところに各醸造所の努力がうかがえた。


数年前から、近隣のスーパーや酒屋で、Brewdogというビールを見かけるようになった。スコットランド産のビールだという。スコットランドのお酒と言えばウイスキーという固定概念があった私は、珍しいビールがあるなと思い手に取った。様々な味があるので、いくつか購入して飲み比べてみた。

どれも比較的すっきりとしているが、どこか奥深い味わいがする。ラベルをよく見ればエールとのことだった、酒屋の品ぞろえや仕入れにもよるが、どんな味がするのか興味のわくものが多く、週一回の贅沢として金曜日に購入するのを楽しみになった。


Brewdogのビールを飲んでみて、初めてIPAという種類のビールがあることを知った。ざっくり調べた限りでは、ビールを船旅に持っていくときに、ホップを大量にいれて防腐効果を高めたのがこのIPAという種類のビールとの事だ。IPAはインディア「インディア・ペール・エール」の略称とのこと。生まれたのはインドではなく船の上、という説と、インドで産まれたビール、という説の両方があるようだ。


モルトと高品質なホップ、スコットランドの美味しいお水、そして自家製の酵母を使って作られているこのビール、エールの名にふさわしく、どれも少し薄めの小麦色で、ラガー・ビールとはまた少し違った味わいだった。


スコットランドのビール醸造の歴史は長く、五〇〇〇年前まで遡れるといわれる。ある発掘調査では、スコットランドのオークニー島の遺跡でビールの原料となるモルトが作られていた跡が発見されたそうだ。ケルト人がもたらした醸造方法でビールが作られ始め、ヨーロッパのどこよりも早くビールが醸造されていたとも言われる。

現代の様なビールが醸造され始めたのは中世の時代で、修道院で醸造されていたと言われる。十九世紀から二〇世紀にかけて技術レベルと輸送方法が飛躍的に進歩し、スコットランドのビール産業は大層繁盛したとされる。良い水が手に入り、交通の便もよかったエジンバラでは、一時期三十八か所もの醸造所が稼働していたとの事。ウイスキーはスコットランドの特徴的なお酒の一つだと思うが、ビールもスコットランドでは大変長い間作られ、親しまれてきた飲み物のようだ。

出典:Archaeology Scotland

近年ではまたビール醸造所の数が増えてきており、Brewdog社もその先駆けの一つであるようだ。


Brewdog社はロンドンにもバーを数件構えており、市内で気軽に飲むことができるという。くだんのロンドン在住の友人も時々行って楽しんでいるそうだ。同社のバーはヨーロッパやアジアでも展開されており、日本では六本木にあるとのこと。また、スコットランドの他オーストラリアやドイツにも醸造所を持ち、見学も可能とのことだ。二〇〇七年創業の若い会社ではあるものの、海外進出も積極的にされているようで、日本でも飲める場所が増えると嬉しいなと思う。同時に、コロナ渦が過ぎたら、いつかスコットランドの醸造所を訪ねてみたいとも思った。



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