【読書メモ】LIFE SPAN(ライフスパン) 老いなき世界

人生100年時代とも言われるように、人類はかつてないほど長生きするようになった。
だが、より良く生きるようになったかといえば、そうとはいえない。

ハーバード大学医学大学院で遺伝学の教授を務め、長寿研究の第一人者である著者は、なぜ老化という現象が生物に備わったのかを、「老化の情報理論」で説明し、なぜ、どのようにして老化を治療すべきなのかを、最先端の科学的知見をもとに鮮やかに提示してみせる。

私たちは寿命を延ばすとともに、元気でいられる期間を長くすることもできる。では、健康寿命が延びた世界を、私たちはどう生きるべきなのだろうか?

変えられない未来などない。
私たちは今、革命(レボリューション)の幕開けだけでなく、人類の新たな進化(エボリューション)の始まりを目撃しようとしているのだ。

LIFE SPAN(ライフスパン) 老いなき世界

デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント著

少し冗長だったので、忘れないように内容を簡単にまとめておこう。

第一部(過去):老化は万人を蝕む見えざる病気である。しかし老化は、治療できるありふれた病気である。
第二部(現在):老化の仕組みは解き明かされつつあり、他の病気と同様に治療も可能である。すぐに取り組める対処法と、研究中の最新の医療情報の紹介。
第三部(未来):老化の克服がもたらす未来とは。私たちは社会と地球のさまざまな課題を乗り越えていく。


老化の正体

生体内には2種類の情報がある。ひとつはDNAで構成される「ゲノム」の遺伝子情報で、情報の保存や複製を正確に行っている。もうひとつが「エピゲノム」であり、遺伝子の情報のオン/オフの調整弁の役割を果たしている。例えば、新生児は1個の受精卵から出発して、約260億個の細胞を持つようになる。細胞1個1個にはすべて同じDNAが格納されているのに、それぞれの細胞は何百種類もの異なる役割へと分化する。そのプロセス全体の調整をしているのがエピゲノムであり、分裂するそれぞれの細胞に対して、どのような種類の細胞となるかを調整している。

ゲノムの遺伝子情報がデジタルに保存や複製を行えるのに対して、問題は、エピゲノムはアナログということだ。デジタルと違って、アナログ情報は時間とともに劣化する。複製の際に、少しずつ情報が失われてしまうのだ。そうすると細胞がアイデンティティを喪失し、組織や臓器が次第に機能しなくなっていく。これが老化の正体である。すなわちエピゲノムの劣化こそ、老化の原因なのである。

老化を防ぐ方法

エピゲノムの劣化を防ぐ方法として、下記の5つが挙げられている。老化を防止する長寿遺伝子サーチュインを活性化させるための方法であり、いずれも簡単に取り組むことができる。

・カロリー制限をする(食べる量を減らす、食事の間隔を空ける)
・適度に絶食する(体を飢餓状態にして細胞を活性化)
・アミノ酸を制限する(動物性タンパク質よりも植物性タンパク質を摂る)
・適度な運動をする(中高強度の有酸素運動がよい)
・寒さ(暑さ)に身をさらす

特に目新しいものはない。16時間断食やファスティング、少し負荷のある運動など、適度なストレスは身体に良いということだ。逆に言うと、快適な環境にずっと身体を置いておくと、一気に老けてしまう。新しい物事に日々チャレンジしましょう。

また食事が1日3回という慣習は、19世紀にエジソンが発明したトースターを普及させるためのセールスコピーが由来だと言われているが、それ以前は1日2食だった。一般人は1日に3食も食べる必要はない。

老化の克服がもたらす未来

老化を防ぐことで、医療コストの削減や社会保障制度の健全化に期待できる一方、お金も持つ人が長生きできるようになる「健康寿命の二極化」や、増える人口に対して食料や環境を維持できるのかといった懸念もある。長寿社会に対して誰もが抱く不安だ。しかし筆者は、老化を遅らせることによる経済効果や、医療費の削減で浮いた予算を科学研究や教育に回すことでより良い未来が来ると考えている。

そしていちばん重要なことは、長い人生がもたらす人間らしさ、人生の素晴らしさを味わうことだ。すなわち我々が健康寿命を長くすることでできる「時間」をどう使いたいかである。古代ローマの哲学者セネカは人生の短さについて自らの信仰者たちをこう諭している。

どんなに忙しくても足を止めて薔薇の香りを嗅ぐ余裕をもて。過去を忘れ、現在を疎かにし、未来を恐れる者には、人生は短く、不安に満ちている。人生の素晴らしさを味わえぬ者にとって、時間は非常に安価なものとみなされている・・・こうした人々は、時間がどれだけ貴重かわかっていないのだ。


健康的に幸せに過ごす事の出来る時間を増やし、その時間をどう過ごすか。いたずらに浪費しながら過ごすのなら意味がない。主体的に時間管理をして行動しましょう(自分への戒めとして)。




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