まつ育に励む浦島太郎
この一年、マスクを着けているのが当たり前になってしまった。
以前は、冬の風邪っぴきのとき、長距離移動、ホテルに泊まるとき、私はそれくらいでしかマスクを使っていなかった。
いまだに玄関まで出て、あ!マスクマスク!と部屋に戻ることがあるが、基本的にはマスクなしで歩くなんて、裸で歩くほど(?)違和感があるくらいには慣れた。
そんなマスク生活で失ったものもある。
そう、気付かないうちに老けていた。
もちろん一年経てば、一年分老けて当然。
マスクをつけるせいで、ろくにメイクもせず、鏡を見る機会も減り、自分の顔をすっかり忘れてしまったような気がする。
ふと鏡を覗き込んだとき、え?私、こんなだったっけ?と動揺した。
鏡に映る私は私が知っている私じゃなく見えた。
私が私でなくなったのはきっとメイクが原因。
手始めはリップ。
マスクにつくのが嫌だなあとリップをやめてリップクリームのみにした。
お次はチーク。
リップ同様、マスクも汚くなる。見えないのにつける意味ないじゃん?と早々に見切った。
そしてファンデ。
マスクにたっぷりつき、ヨレでどんどんムラになり毛穴落ちもすごいので、下地とお粉だけにした。
そうこうしているうちに、何故か、マスクの影響を受けないアイメイクまでもが手抜きになっていった。
長らく愛用していたつけまつげを辞め、シャドーもアイライナーも辞め…て、え?これじゃすっぴんじゃん?お粉に眉をささっと、これで許されるのって美人だけでは…?
そりゃ鏡に映るのが老けたおばさんなわけだわ。
浦島太郎もきっとこんな気分だったんだね…突然老けてびっくりだよね…と自分の手抜きを昔話にすり替えて現実逃避し納得させていたが、冷静に考えてこんなのイヤじゃん!?と、急に正気に戻った2020年の年末。
続くであろうマスク生活。よし!アイメイクに力を入れようと、2021年は以下2つをまず目標に掲げた。
①眉毛サロンで眉毛を整えてもらって描き方を習う
②まつげパーマをする
そのために、眉は手入れせず放っておき、まつげ美容液でせっせとまつ育に励んだ。
眉はボサボサ、元々薄いので輪郭ボケボケに育った。
まつ育は、恐らくこれまでで初めて大成功。
今までの美容液は、ん〜〜〜〜?効果…ん〜〜〜〜微妙に伸びたかな?くらいだったのが、毎日せっせと塗り続けていたら、ある日ふと、あら?なんか伸びてる…?と気付いて喜びに震えた。
成果が出ると人は更にやる気がみなぎる。
日々伸びゆくまつげにニマニマした。
ただ、身体の中のまつげの割合なんてほんの少し。
こんな小さな範囲をちまちまと育成してニマニマしている自分がなんだか滑稽に思えた。全体的に見れば、変化は分からない。気付く人もいない。
でもやはり、そうと分かっても伸びていることへのニマニマは止まらない。
そして、機は熟したとばかりに、意を決して、眉毛スタイリングとまつげパーマの門を叩いた。
眉毛は手妻のようにみるみる整えられ、薄眉の私でも眉らしい眉になったが、残念なお知らせとして、1ヵ月を目途に伸びて来ていじりたくなると思うので、その頃また整えに来てください!とのことで、維持が大変と分かった。(もちろん行くいかないは私次第。)
まつげパーマは、ゴリゴリ一重の私のまつげを精いっぱいに上げてくれて、これで苦手なビューラーからも開放されると安堵した。
そして、長きに渡ったつけまつげ生活に別れを告げた私は、何年かぶりに(!)マスカラを購入しその性能の高さに驚いた。
本当に浦島太郎状態だった。
つけまつげやまつエク、カラコンの類は、着け慣れてしまうとやめるタイミングを失う。見慣れてしまった装着後の顔をあたかも自分の素顔と錯覚してしまっていたが、現実は三十半ば年相応のお疲れ顔が私の素顔だ。
つけまつげに別れを告げ、眉毛を整え、まつげをくるんとさせ、まつげ美容液も習慣化した。
本来、コロナ云々がなくても私は変化の時を迎えていたんだと思う。少し遅くなってしまったけど三十代の私のメイクを考え始めよう、と、今は何だか前向きでウキウキした気持ちでいる。
マスク生活で、失ったもの、得たもの。
得たものが大きいかもしれない。
あたらしい自分に出会う春になりそうな予感がする。
おわり
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