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「静かに燃えて」が始まった・・・「デビュー作にして遺作」その2・・・映画のような人生を送った監督について


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学生時代から知る小林豊規(とよのり)監督が、
彼が我が家に遊びに来たのは、2018年の初頭であった。

私の母が亡くなり、住んでいた家が空いて、
荷物置き場になっていたのを、

「撮影に使えそうなら使ってよ」

と軽い気持ちで声を掛けたのだ。
もちろん、その時にどんな映画を考えていたかは知らなかった。

ただ、どこで何を撮影するにしても、
ロケ場所は必要で、借りるとお金もかかる。
無料で使えるなら良い事に違いない。
そう考えて提案した。

「連棟の所謂テラスハウスの端の部屋で、この部屋にだけ壁に窓があるんだ。
二階には和室と洋間。全然違った雰囲気で撮れるよ」

コーディネーターのように売り込んだ。

そして、小林監督は今温めている企画の話をし始めた。

「あるカップルの話なんだけど、一緒に住んでいて
密かな恋心を抱えたまま葛藤する話と、もう一つは出来の悪い弟の為に
姉が苦労する話。ちょうど二間あるし、良いんだけど、
それぞれちょっと短めの話なんだ」

「じゃあ両方使えば、例えば・・・」

そんな話をした数週間後、
小林監督はシナリオを書いて送って来た。

ロケ地を紹介したことから、第一稿を読ませてくれたのだ。

ところが、そのシナリオを読んだ私は、

「売りにくい気がする。映画の魅力を宣伝しずらい」

など勝手な感想を並べたて、
小林監督を怒らせてしまった。

それでも彼は自分の感覚を信じ、撮影に入り、
ここでは言えないようなトラブルが起こる中、
たくさんの人々の協力を得て、あの前代未聞のコロナ禍も乗り越えて、
ついに映画を完成させたのだった。

試写会の大きな画面で見た時、
編集途中のパソコンの画面では読み取れなかった
映像の魅力、映画の魅力が感じられた。

ここまでの事をシナリオの段階から、きちんと頭の中で構築し、
現実の映像に写し込む、映画監督、映像作家としての才能を改めて感じた。

「やはり映画は、監督のものだな」と改めて思った。

ここでもう一度頭を下げたい。

「シナリオに勝手な事を言って御免なさい」

つづく

今回も、個人的に見つめた小林監督について、改めて思い返してみました。*一部、公開時の内容とダブりますのでご容赦ください。



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夢乃玉堂
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