「裸の町」青年劇場・・・若き役者たちの今しか見られない演技がそこにある。
「裸の町」は、昭和初期を物語の舞台にしている。
概要を言うと、仕事に失敗した若者が、金を取りたてに来た金貸しを信じてしまい、理想と現実の狭間で慟哭する。という内容である。
今回は、劇団の若手俳優を中心に組み立てた芝居だという。
私は、大きな劇団に所属する若手俳優の芝居を観る時にはいくつかルールを決めている。あくまで、私個人の心の取り決めなので、異見がある方もご容赦願いたい。
①、その俳優の伸びしろを感じ取ること。
現代の若い俳優が、昭和初期の生活感を過ぎに出せというのは難しい。
それはどの芝居に言える事なので、私はいつも、今観ている芝居の俳優たちを『どこまで俳優として伸びるだろうか』と、数年後の姿を想像しながら観ることにしている。
若手役者なのだから、熟練の芝居やこなれたセオリー通りの人物造形、ありふれた演技などではないものがある。
②、その芝居に出てくる職業に込められる普遍的な人間性を感じ取る事。
例えば、「金貸し」という職業である。かつて「高利貸し」近くは「サラ金・闇金」などという言葉で呼ばれた商売だ。健全に生きていると意外に、どういう仕事か理解できないかもしれない。実感を与えるのは難しいだろう。
そこを、例えば現代の自粛警察やモンスター○○などに、自分の損得が絡んだものと考えて、その商売に就くことで表に出てくる「人間の業」を芝居の中に見るようにしている。
③、役者の人間性が垣間見られる瞬間。
2~30年の人生ながら、自分の体に染みついている「個性」と、求められている「役柄」を、どう折り合いをつけていくか、必死にもがいている姿が見どころだと思う。役者の人間性が垣間見られる瞬間ということになろうか。
数年後には、そのもがきが、「結果」となって表れてくることだろう。
それにしても、緊張を強いる作品である。
力強いセリフが連なり、舞台からこぼれるように観客に向かって来る。どこまで聞き取るのか迷う所である。そのため、セリフの無いところでは、観客も役者もホッとしているような感覚に陥った。ベテランのアドリブ合戦を見るようなものなのかもしれない。
公演も配信も終了しているので、診る機会は少ないと思われるが、
再演があっても全く同じ演技は見られない。
とにかく、この若き役者たちの、この時期にしか見られない演技というものが、確かにそこにあった。
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