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じっくりと言葉の向こう側を考えると・・・「復顔術」


あっという間に読める、超ショート怪談。でも、よ~くその場面と背景にあるものを想像してみると、じわっと何かが迫ってくる。

「復顔術」 by 夢乃玉堂

一年前、溺愛する妻を事故で亡くした男を、
喪失感という名の鞭が苛んでいた。

妻の遺品を見るたびに、
楽しかった日々を思い出し、
心をいたぶるように打ちすえる。

「愛しき妻よ。もしも帰ってきてくれるなら、
私は何でもする」

ある日男は、さびれた骨董屋の一角に置かれた
リアルな骸骨の置物を見つけた。
骨董屋の主人によると、
19世紀前半の品で、
本物の頭蓋骨を型取りして作られたという。

「ただの置物ではありません。
不思議な力を持っているんですよ。ひひひ」

骨董屋は、下品な笑いを浮かべながら、
置物の秘密を語り出した。

「この置物に粘土で肉付けをし、
亡くなった人の顔を再現すると
やがて、その顔が・・・喋り出すようになりますのじゃ」

男はその場で大枚をはたいて、
その不気味な置物を購入した。

「もうすぐ、妻に会える。又話すことが出来る」

その日から男は、熱心に、そして慎重に
頭蓋骨の置物に粘土を張り付け、
妻の顔を復元していった。

だが、男の儚い夢は結局通うことは無かった。

この不思議な頭蓋骨が偽物で、骨董屋に騙されたのか
男に、粘土像が語り出すほどの
芸術的センスが無かったのか、
のどちらであったのかは分からない。

しかし、しばらくして、
カルチャーセンターの彫刻体験講義に
熱心に通う男の姿があった。


            おわり



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夢乃玉堂
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