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あったかいものを飲む幸せ
職場用にマグボトルを買った。それがとても気に入っている。手元にあると嬉しくて、いつも持ち歩いている。
恋人が電球を買うというので家電量販店について行ったら、偶然出会ってしまったのだ。コーヒーメーカーの横に色とりどりのボトルが並んでいて、家電屋でも種類豊富に水筒を置いているんだなぁ、と見るともなしに眺めていたら、それが目に入った。
ころんとしたフォルムにスモーキーな色合い。水筒らしくない見た目の小さなマグボトルが、鮮やかでシュッとしたボトルたちに囲まれて異彩を放っていた。可愛い……!一目惚れだった。
寒くなってから、甘くてあったかい飲み物を欲している。いつもお茶か水を持ち歩いているのだけれど、それに加えてカフェラテやココアを買うようになった。コンビニや自販機の「あったか〜い」コーナーにある、ペットボトルの。水筒を洗うのが面倒だし、もうそれでいいやと思っていたのに、唐突に欲しくなってしまったのだ。
……安くはないけど、高すぎる訳じゃない……自販機で買うのをやめて、家でボトルに淹れていけば2ヶ月で元は取れるはず……これは無駄遣いじゃない、必要経費だから、大丈夫、大丈夫……
電球を選ぶ恋人を尻目に、15分ほど自分への言い訳を繰り返し、とうとう買ってしまった。ほくほくした気分で大事に持って帰った。それから毎日のように使っている。
朝起きて、やかんを火にかける。着替えたり顔を洗ったりしながらお湯が沸くのを待つ。飲むものはそのときの気分で決める。ブレンディのカフェラテだったり、はちみつ紅茶だったり、ほうじ茶だったり。マグカップにお湯を注いで飲みものを作る。使い慣れたカップで量を確かめたほうが、おいしくできるのだ。そして、熱々のままマグボトルに淹れる。
こうして作った飲みものは、夕方になってもほんのりあったかい。ペットボトルだと1時間かそこらで冷めてしまうから、保温できるっていいなぁ、と思う。ころんとしたマグボトルは、殺風景な職場でもやっぱり可愛い。好きな飲みものがすぐそこにあるだけで、憂鬱な仕事もすこしだけ頑張れる気がする。すこしだけ。
懸念していた後片付けだけれど、ボトルに茶渋や匂いが残らないようにしなければ!という使命感で、今のところ順調にできている。こういうのは継続が大切だから、帰ったら早速洗わなきゃ。
明日は何を淹れていこうかな。