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計らい

北海道で星読みのyujiさんに、「高野山が呼んでいます。行ってください。」と言われた時があった。


呼び出しなんて、高校の職員室ぶりだったから、ビビって、次の日の帰りの飛行機チケットを捨てて、高野山へすぐ飛んだ✈


高野山へ行ってみたら、前回の記憶が戻ってきた。

3年前。

奥の院へたどり着いたら、急に土砂降りの雨が降ってきて足止めを食らった。その時、奥の院の本堂の裏にいたのは太っといロウソク🕯の火を
かえている清掃のおじいちゃんと私だけ、2人だった。

「このロウソクは毎朝決まった時間に、かえているんですか?」

2人きりになったら即、話しかける。脊髄反射の私がいた。

「そうやで。それにしても、酷い雨になったなぁ。そこに腰掛けよか~」

空海さんが今も即身仏となって、いらっしゃると言われている廟の前に腰掛けた。雨は強くなるばかりで、どこから来たの?とか孫のお話とか、高野山で働いている人の話とか、うふふあはは~と、色々な話をして気が付いたら1時間経っていた。
かなりの雨の中、奥まで誰もたどり着けないのか、ひとっこ一人来ず、ずっと二人きりだった。

1時間経って、やっと雨が弱まってきて、おじいちゃんが、

「あんた、次に行くところあるんと違うか。雨も弱まった。下につくころまでには晴れるだろう。行ってらっしゃい。」

(この時点で、例の”熊野へ行け”と数人に言われており東京に帰らず、熊野に向かう兆しがあった。)

そんなこんなで、3年前に高野山の奥の院で出会った清掃のおじいちゃんがいた。その出会いを思い出し、私は、”高野山からの呼び出し”を受けて何をすればいいのか分かっていた。

あの1時間は普通じゃない。
雨が猛烈に降って、私が話しかけたくなるシチュエーションが用意されていた。我々の他、誰も来ずに、気が付いたら1時間経っていた。

あの廟の前に座るんだ。
時間はあの時と同じ、1時間なんだろう。

しかし、何日すれば良い?あの時は急いでいたから、たった1日のうち1時間だった。今回は?数日するのか?1日の間に何時間か座るのか?どうなってるんだ?

とりあえず、宿に向かい荷物を降ろそう。
どうするかは、宿についてから決めよう。
そういえば、伝えていた到着時刻より早く宿につきそうだ。
一報、入れておくか。

「すみません、本日1泊、予約している者なのですが、早く宿に着きそうで。早めに行っても宜しいでしょうか?」

「ごめんなさい!今、突然に海外の団体客が来ちゃって、対応が手一杯なの。1時間くらい後に来てもらっても良いかしら?本当にごめんなさいね。ちなみにね、宿の近くにある奥の院がおススメなの。明るいうちに行っていらしたらいかがかしら?ごめんなさいね。」

1時間、、、。奥の院を勧められた、、、。
廟の前に座るのは、今日からか、、、。

察した私は、この日から奥の院に1時間行くこととなる。
(突拍子もない人間だけど、わたし空気は読めるんだ。(笑))

次の日も、廟の前に朝から座り1時間。この日は、これで良いと思った。
何だかお腹がいっぱい、という感覚なのだ。


つまり。
憶測でしかないが、1日あたり受け取っているのか?何かしている量?が1日のうち1時間が限界だということだ。

到着して向かった、昨日と今日とで計2時間。
これで帰るか?自分の感覚はどうだ?
2時間で良いのか?いや、あと1日くらいだな。

何故か分からないが、自分と対話して、あと1日必要、計3日必要なんじゃないか?という結論に達した。

しかし、宿も海外団体客で一杯だった。今日、延長で泊まれるところはあるのか?無かったら、あと1日なんて、私の思い違いかも。そもそも、そんなに感覚が鋭いわけじゃないし。勘違いだったのかも。

と思って、宿に帰って延長の話をしたら、やはり満員とのことだった。
ああ、思い違いだった。午後には帰ろう。
そう思って、部屋に戻って帰りの支度をし始めた時だった。

「メールにキャンセルが入ってたの!もう一泊、泊まっていって!」

どんでん返しが多い旅である。すぐに延泊を決めた。



ところで、冒頭に紹介した清掃のおじいちゃんだが、初日も2日目も、なんとなく思い出して奥の院の辺りを見渡してみたがいなかった。辞めちゃったのかな、、、。でも、もう一度お会いしたいなあ。そんなことを考えていた。

3日目。
朝から1時間、廟の前に座った。
たぶん、これで今回は大丈夫なはず。
それにしても、清掃のおじいちゃんに会えなかったな。

このまま帰るんですよ。私、このまま帰るんですよ。
空海さん、数年前に初めてここに来たときに、私とお話していた清掃のおじいちゃんご覧になっていましたか?この3日間、ちらりちらちら、と見ていたけれど、まったく見つけられなかったんです。私、もう一度。もう一度会いたいんです。あのおじいちゃんに、会いたいんです!!!!!!

強く願って、廟の前で立ち上がった。周りにはまた誰もいなかった。
少し待ったけど、あの清掃のおじいちゃんは来なかった。

はぁ。そうですよね。数年前ですもんね。
お辞めになられたのかもしれませんね。
すみません。無理を強く願ってしまって。。。

そんなことをお詫びしつつ、一礼。
頭を下げて、廟を後にした。

3日間、ここの前で座らせていただいたことに感謝だな。
そんなことを思いながら、奥の院を出ようとした。

その時。突風が吹き荒れた。
ものすごい強い風だった。
あたりを見渡すと、階段や通路に枯葉や小枝などが散乱していた。
昨晩から、軽い嵐が来ていて、道を荒らしていた。
その風が残っていたのだった。

あらまあ強い風だわ、と、目を細めながら前を向けば。
道の先から、ブロワー(ハンディー掃除機)を右手に持った5人がやってきた。

真ん中にに1人。その後ろに放射線状に人が並ぶ。
アベンジャーズのようだった。

ブロワーで、荒れた小道を吹き払っていた。
あれ?
あれ?あれれ?

真ん中にいる中心のおじいちゃんは?私の探している人ではナイデスカ?

あちらも、こちらに向かってきて、こちらも向かっていった。
しかし、声を掛け合うこともなく互いに素通りした。
いや、人違いか、、?数年前の事である。もしかしたら、あのおじいちゃんなのだが、申し訳ないことに、当方、おじいちゃんの見分けがつかぬ。

いや、絶対そうだ。この枯葉。このタイミングでの清掃アベンジャーズ到来。すべてが整いすぎている。これぞ空海さんの導きと言わずに何という!

「あの!すみません!」

数年前に高野山に来たこと。奥の院で土砂降りに会ったこと。
ロウソクをかえる話を質問したこと。私がどこから来たのか話したこと。
お孫さんの話。おじいちゃんのその時の最近の話。高野山で働いている人たちの話。

数年前の1時間にあったことを一瞬でまくし立てた。
人違いだったらごめんなさい。
でも、私はずっとお会いしたくて。

「あの時の子か!○○から来ているって言ってた!」

2人で、お久しぶりです~と、わきゃわきゃと喜び合った。

今は違うエリアの清掃なんだと教えてくれた。高野山は広いから、たくさんの区分けがあって、年単位でローテーションなんだそうだ。
あの時、偶然にロウソク当番の人が早退して、おじいちゃんの当番になったこと。そして、大雨が降ったこと。私と出会い、話したこと。

今日は、たまたま夜に嵐が吹き荒れて、道が小枝だらけになってしまって、今朝、緊急で応援部隊が組まれたこと。そして、たまたまこの時間に私が奥の院にいて、今おじいちゃんが応援部隊として選ばれて、ここに来たこと。

「これは、お大師様の計らいじゃな~」

と、おじいちゃんと一緒に振り返って廟を見た。

住所を交換して、お手紙を送りあい、高野山へ行くときには連絡させていただいている。

この前は、一緒に奥の院に参拝して、廟の前に立ち目を閉じて両手を合わせ、おじいちゃんに再開した感謝を空海さんに伝えた。目を開けると、廟の横にある太いロウソクが、ゆらゆらと笑っているように見えた。

おわり。

photo by まよ

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地域冒険家による地域冒険記です。 基本的には、気に入った地域に何度も何度も足を運び数十年単位で入り込んでいきます。その他、単発にて地域の考…

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