自暴自棄になって新宿のキャッチに捕まってみた話
服飾学校にも行けなくなり、BMWさんとも別れた私は、精神的にかなりやばい状態になっていた。
生きているのかどうかもよくわからないような感じ。
かといって、家でじっとしていることもできず、私はフラフラと街に出た。
あてもなく、どこに行こうということも何も考えず、フラフラと新宿で降りて、フラフラとアトレの横の歌舞伎町の方に向かう道を歩いていた。
その通りはいつもキャッチの人が2〜3人いて声をかけてくる。
歌舞伎町周辺のキャッチは捕まるとやばいと思っていたので、いつもは足を止めずダッシュで走り去っていたが、その時はもう本当に全てのことがどうでもよくなっていた。
どうでもいいからその時、そのキャッチのお兄さんについて行ってみようと思った。
キャッチのお兄さんは私を雑居ビルの中のある部屋に連れて行った。
その部屋は真ん中でガラスで区切られていて、片側に男性が、片側に女性が座るようになっている。店内は昼間なのに夜のバーのように暗かった。
区切っていたガラスはマジックミラーで、女性側から男性側が見えないようになっていた。
私が座ると程なくして、お店の人が番号と一言メッセージが書かれている紙を何枚も私のところに持ってきて、この中から一枚選べといった。
お見合いバーというのかな?
私は適当に一枚選ぶと、ガラスの境の向こう側につれていかれ、ある男性の隣に座るように言われた。どうやら私が選んだ番号の男性らしい。
その男性は50代くらい。普通のサラリーマン風。
私はきっと彼氏と別れたとかそんな話をしたのだろう。よくわからないけど、肩を揉んでもらった記憶がある。
しばらくするとその男性が外に行こうといった。外に出ることもできるらしい。
私は了承して、二人で外に出た。
外に行くと、その男性は美味しいワッフルが食べれるお店があると、新宿の伊勢丹近くの、新宿東口からマルイや伊勢丹の方に伸びている大通りと靖国通りの間の脇道にある、オープンテラスのあるカフェに行った。
そこで、アイスやらフルーツやらチョコレートが乗っている豪勢なワッフルをご馳走してもらった。生まれて初めてこんな豪華なワッフルを食べた。とても美味しかった。
ワッフルを食べ終わると、おじさんは青龍門という台湾小皿料理のお店に連れて行ってくれ、お腹いっぱいご馳走してくれた。空芯菜の炒め物がとても美味しかった。
その後カラオケにいって歌を歌った。ルージュの伝言の覚えていたメロディーが一部間違っていると突っ込まれた。
最後にそのおじさんは一度だけ抱きしめてもいいかなと言ってきた。
私は、特に嫌でもなかったので、そのおじさんに抱きしめられた。
おじさんは言葉通りにそれ以上のことは何もしなかった。
別れ際、名刺をくれて、何かあったら連絡しておいでと言われた。
その時は本当に絶望して死のうかなとすら思っていた私は、このおじさんに癒された。
結局その後連絡することはなく、名刺も捨ててしまったけれど、この時のおじさんには感謝しかない。
おそらく、もっと別の人だったら、ホテルに連れて行かれるとか、カラオケ行ってる時点で猥褻なことをされるとか、可能性としてゼロではなかったと思う。
あの時、この親切なおじさんにあたって私は本当に良かった。
全く見ず知らずの私を助けてくれてありがとう。
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