スコッティの仕事術 (スタートレックから学ぶエンジニアの生き方)
自分の仕事のやり方を思い返すと、ある作品のキャラクターの台詞と被るのですよね。
そのキャラクターとはスタートレックの初期シリーズである宇宙大作戦に出てくるエンジニア、モンゴメリー・スコット(愛称はスコッティ / チャーリー)です。
とはいっても私はテレビシリーズの世代ではないので劇場版の方になるのですけど。このやり取りが劇場版内であったのか、たまたま目にしたテレビシリーズだったのか、はたまた私の妄想なのかは記憶が混じっていることもあり正直わからないのですが・・・
「あと10分ください。」
「5分だスコッティ!」
作品内でカーク船長相手にこんな会話があるのですよね。物理的に10分かかる工程を半分なんて無理だろ!と思いつつもエンタープライズ号が危機に瀕しているわけでカークも悠長なことは言ってられない・・・ちょっとした詰む一歩手前ってやつです。
しかし我らがスコッティはその無理難題に応えてみせます。そして期待通りの仕事を果たした相手に「よくやった!」と労いの言葉も程々にカークの指揮でエンタープライズ号は困難を乗り越えるのです。
実際は全ての状況がそうであるかは分からないのですが、スコッティは作業時間にある程度サバを読んでいるのですよね(笑)
勿論スコッティは超優秀な人物であり、尊敬する船長(カーク)を酷く馬鹿にされても「まぁ落ち着け」と我慢しつつ同僚を静止できるけど、愛すべき船(エンタープライズ)を馬鹿にされた瞬間に相手が戦闘民族だろうが掴みかかっていく根っからのエンジニアなんですよ・・・カークカワイソス(;´Д`)
子供時代の私はこんなスコッティを観て「好きなものを馬鹿にされたら密かにスパナを握る」ことと「自分の能力の範囲内で仕事を無事に完遂する為には余裕が必要」だということを学ぶのです。
そんな気付きとともに幼児が学ラン小僧になった頃でしょうか。スタートレックは新スタートレックとなり、その主役は仲良しおっさん三人組から次の世代へ引き継がれます。
時系列は繋がっているもののエンタープライズ号という宇宙船の名前以外は旧シリーズと密接な繋がりをたまにしか感じない新しい世界。
そこにとんでもない爆弾が放り込まれてきたのですよ。
旧シリーズと新シリーズの間には約80年程の月日の積み重ねがあるわけですが、勿論そうなると旧シリーズの地球人の登場人物は寿命的に再登場は厳しくパイロットエピソードで137歳の元提督として登場したドクター・マッコイもかなり力技だったと思います(笑)
そんなシチュエーションの中でとあるエピソードに突然登場したのは劇場版の最後に観たぽっちゃり「モンゴメリー・スコット大佐」そのまんまの姿ですよ。
え??? なんで???(゚д゚)
そりゃ最後に活躍した時代から80年も経っているわけですから困惑します。まぁ今回の記事の本題ではないので雑に解説するとスコッティは事故に遭った際、救助を待つ為に自身をデジタルデータに変換して保存する事で極限の環境を生き残ったわけです。
エピソード自体は仲間や時代から取り残される形となったスコッティの葛藤や古い技術やモノの見せ場を存分に描ききったとても熱いお話なのですが、今回の記事で注目したいのは次世代のエンジニアであるラフォージとの邂逅です。
そのやり取りは単純なジェネレーションギャップだけでなくエンジニアという職業に限らない一線に立ち続けられなくなる悲しみと引き際を見定める必要性を作中の会話や行動で自然と見せてくれます。このエピソードの肝は時代が過ぎれば古いものは役立たずということではなく、知識や経験は無駄にならず役立てる場所はきっと何処かに存在することも示している点ではないかと。
そんなスコッティがラフォージに報告やスペックシートを改竄(笑)するアドバイスを授けるシーンが改めて当時の私に刺さったのでしょうか、社会人になってからもその教えを忠実に守ることになります。
子供の頃はそこまで理屈として理解まではしていなかったのですが、人間出来ますと言われた時間で仕事が出来ないと残念がられます。例えば予想外のトラブルが発生したとしてもです。
では余裕を持った時間で物事に取り組めば?
スコッティも言うように仕事が早いという評価や万が一のトラブルもリスクコントロールしつつ対応することが出来ます。
字面だけだとなんだかズルをしている様ですが、これは社会に出て身を守る為に必要なスキルでもあります。
なんと言っても指示をしてくる側が有能とは限らない、またはエンジニアの分野に明るく無い可能性があるからです。
もしも指示者が優秀且つ知識も豊富で現場の苦労をわかる人間であればズル(笑)をしなくても良いと私は思っています。
何故かというとそこまで緻密な指示者であれば「どれだけで作業が終わる見立てなのか?」に余分なマージンが入っているとエンジニア部分以外を含めた全体の計画立案にノイズとなってしまうからです。
「生の数値」を伝えていい有能な相手であれば大抵は「マージン」自体を予め設けますし、万が一の目標が達成できないリスクも頭に入れています。
要はスコッティが話していたリスク管理のあれこれをエンジニアは手放して良い状態なわけです。
まぁ実際の現場はそんな単純なものでは無いのですが、子供の頃に見たSFエンジニアの生き方が三流とはいえエンジニアとして二本の足で立っていた当時の私を支える一助となっていたわけです。
生真面目な方はズルという部分に嫌悪感を示すかも知れません。しかし残念な事に世の中細部迄目の届く指示者は早々いるわけでもなく、同時に社会に出たからには餌を待つ雛のようにその登場を無為に待ち続けるわけにもいきません。
個人的な話ですが、私は積み増しした余剰時間で別の仕事を行っていました。別の仕事と言っても副業とかではないですよ?
今後の仕事に役立つ資料やツール作りに整理整頓といわゆる事前準備と呼ばれるものを詰め込んでいました。
余剰をみた上で「〜で出来ます!」というからには、どんなトラブルがあろうとその時間内に自分の納得するクオリティで終わらせたいじゃないですか。なのでズルはしても主観的ではありますが誠実に仕事へ取り組むわけです。
それが有能でもない三流エンジニアの密かな矜持だったわけです。
スタートレック ネクストジェネレーション
エピソード130「エンタープライズの面影」
今回話の題材に挙げた新スタートレックのエピソードですが、SFに明るくなくともエンジニアに限らず万人に観て頂きたいエピソードですので仕事や生き方に悩まれている中高年の方には是非触れて頂きたいなと思います・・・あ、実際にちょっと困った?目上を相手にしたり、将来自身にも降りかかる境遇である可能性を含めて若い方にもオススメですね。
<次のお話>
<前のお話>
<どくのぬまちをあるくのにそんなそうびでだいじょうぶか>
私のマガジンの中で唯一笑えない話や真面目な話を纏めています。 まぁフィクションですし(゚∀゚) シカタナイ
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